ICF におけるコード化の規則

はじめに

ICF(国際生活機能分類)におけるコード化の規則についてまとめていきます。

ICF の構成要素などの基本的な知識はあることを前提にしています。

ICF では,個人の健康状態や健康関連状況を,適切なカテゴリーコードを選び,それに評価点をつけることで表現することができます。
例えば,b 7302.4 は「身体の片側の筋力の完全な障害」を意味します。

記号で表現することにより,国際的な共通言語として扱いやすくなります。

各構成要素の表記

最初のアルファベットは各構成要素の頭文字です。

  • b:心身機能(body)
  • s:身体構造(structure)
  • d:活動と参加(domain)
  • e:環境因子(environment)

活動と参加を区別するのに,a(活動 activity)と p(参加 participation)を使う場合もあります。

アルファベットの後ろの数字は,各項目の階層構造に対応した数字です。

例に挙げた b 7302(身体の片側の筋力)で説明します。

b は心身機能です。
最初の 7 は第 1 レベルの分類番号で,「第 7 章神経筋骨格と運動に関連する機能」を表します。
次の 30 は第 2 レベルの分類番号で,「筋力の機能」を表します。
最後の 2 は詳細レベルの分類番号で「身体の片側」を表します。

数字は各項目固有のものではなく,例えば s 7302(手の構造)のような同じ数字があります。
必ずアルファベットと数字の組み合わせにする必要があります。

評価スケール

小数点以下の数字が評価点で,各項目の障害の程度などを表しています。

以下の共通のスケールで評価します。

0問題なし(なし,存在しない,無視できる……)0 – 4%
1軽度の問題(わずかな,低い……)5 – 24%
2中等度の問題(中等度の,かなりの……)25 – 49%
3重度の問題(高度の,極度の……)50 – 95%
4完全な問題(全くの……)96 – 100%
8詳細不明
9非該当
表 1

パーセント表示は,集団の標準値のパーセンタイルです。
パーセンタイルとは,データを大きさ順に並べて,小さいほうからみた位置を表すものです。
例えば,100 個のデータを大きさ順に並べて,小さいほうから 30 番目にあるデータが,30 パーセンタイルです。
上のスケールで軽度の問題と判定されるのは,100 人しかいない場合だと,下から 5 番目から 24 番目までの数値を示す人です。

「詳細不明」というのは,例えば,ある人の健康の記録で身体の右側の筋力低下があることは確実だが,それ以上詳細な情報がないというようなときに使います。

心身機能に関する評価点の使い方

第 1 評価点で機能障害の程度を示します。
最初に例示した通りで,b 7302.4 は,小数点以下の最初の数字が機能障害の程度を示していて,身体の片側の筋力に完全な問題があるということを意味します。

評価点は1つだけです。

身体構造のコード化における評価点の使い方

第 1 評価点は構造障害の程度と大きさ,第 2 評価点は変化(構造障害)の性質,第 3 評価点は構造障害の部位を示します。

構造障害の程度と大きさは前述の共通のスケール(表 1)で測定します。
性質と部位のスケールを表 2 に示します。

構造障害の性質(第 2 評価点)構造障害の部位(第 3 評価点)
0 = 構造に変化なし0 = 2部位以上
1 = 全欠損1 = 右
2 = 部分的欠損2 = 左
3 = 付加的な部分3 = 両側
4 = 異常な大きさ4 = 前面
5 = 不連続5 = 後面
6 = 位置の変異6 = 近位
7 = 構造上の質的変化(液の貯留を含む)7 = 遠位
8 = 詳細不明8 = 詳細不明
9 = 非該当9 = 非該当
表 2

例えば,s 75011.171 は,右の膝関節に軽度の構造上の質的変化があることを意味します。
s 75011 は膝関節,小数点以下の最初の 1 は障害の程度で軽度の問題,次の 7 は構造障害の性質で構造上の質的変化,最後の 1 は構造障害の部位で右を表しています。

活動と参加のコード化における評価点の使い方

第 1 評価点は実行状況の評価点,第 2 評価点は能力(支援なし)の評価点を示します。

通常は第 2 評価点までですが,任意で第 3・4 評価点を使用することができます。
第 3 評価点は支援ありでの能力の評価点,第 4 評価点は支援なしでの実行状況の評価点を示します。

さらに,第 5 評価点があります。
これは,参与感や主観的満足感に関する評価点などのように,将来開発されるであろう付加的評価点のために残されたものです。

評価スケールは共通のもの(表 1)を使います。

環境因子のコード化における評価点の使い方

第 1 評価点に促進因子あるいは阻害因子としてどの程度作用するのかを示します。

評価スケールを表 3 に示します。
基本的には共通のスケール(表 1)と同じです。
小数点の後ろが数字のみであれば阻害因子を示し,小数点のかわりに + を用いた場合は促進因子を示します。

0阻害因子なし+ 0促進因子なし
1軽度の阻害因子+ 1軽度の促進因子
2中等度の阻害因子+ 2中等度の促進因子
3重度の阻害因子+ 3高度の促進因子
4完全な阻害因子+ 4完全な促進因子
8詳細不明の阻害因子+ 8詳細不明の促進因子
9非該当9非該当
表 3

環境因子のコード化では,以下の 3 つの方法があり,いずれかを選ぶことになります。

方法1:環境因子を心身機能・身体構造,活動・参加に関連づけることなく,単独にコード化する。
方法2:環境因子を全ての構成要素(心身機能,身体構造,活動・参加)に関連させてコード化する。
方法3:環境因子を活動・参加の全項目について,能力と実行状況という 2 つの評価点のそれぞれについてコード化する。

評価点のまとめ

評価点の使い方を表 4 にまとめます。

第 1 評価点第 2 評価点第 3 評価点第 4 評価点第 5 評価点
心身機能機能障害の程度
身体構造構造障害の程度構造障害の性質構造障害の部位
活動と参加実行状況能力(支援なし)能力(支援あり)実行状況(支援なし)付加的評価点
環境因子阻害因子または促進因子
表 4

第 1 評価点は程度を表すということは共通しています。

パーセンタイルに関する注意点

パーセンタイルで判定するということは,皆と比べて小さいとか大きいとかを判定することになります。
その場合,皆とは違う値をとるからといって,それが臨床的に異常であるとか,生活に支障をきたすとは限らないということに注意が必要です。

パーセンタイルで評価するためには,十分な量のサンプルからとった大きさ順に並べることのできるデータが必要です。
例えば,筋力の関してそのようなデータがあるのかどうか,私は知りません。
また,ICF では,各項目において具体的にどのような評価指標を使うのかは指定していませんし,「ここに示した数量的なスケールを普遍的に用いることが可能になるためには,研究を重ねて評価の手順が開発される必要がある」としています。

おわりに

ICF のコード化を含めた利用は,実際の医療や福祉の現場では現実的ではないように思います。
しかし,理学療法士国家試験では出題されるため,学生は覚える必要がありますし,将来的には便利なツールが開発されていくのかもしれませんので,一応知っておいた方がいいと思います。

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参考文献

1)障害者福祉研究会(編): ICF- 国際生活機能分類-国際障害分類改訂版. 中央法規, 2002.

2022 年 7 月 24 日
2020 年 9 月 29 日
2020 年 8 月 16 日

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