第 2 〜 5 手根中手関節の解剖と運動:基本情報のまとめ

はじめに

第 2 〜 5 手根中手関節(carpometacarpal joint : CMC 関節,CM 関節)の解剖(構造)と運動について基本的なところをまとめます。

中手間関節(intermetacarpal joint)についても扱います。

第 1 手根中手関節については別の記事でまとめています。

手根中手関節は,中手骨の近位端と手根骨の遠位列とのあいだの関節です。

中手間関節は,隣接する中手骨底のあいだの関節です。
中手骨間関節4,18)とも呼ばれます。

目次

関節を構成する骨と関節面

関節面(関節軟骨)の広がりに関する情報はありません。

第 2・3 手根中手関節正面像
図 1: 第 2・3 手根中手関節正面像15)

第 2 手根中手関節

  • 第 2 中手骨底
  • 小菱形骨,有頭骨,大菱形骨

背側から見ると,小菱形骨の隆起に対して第 2 中手骨底に陥凹があります4)(図 1)。
また,橈側から見ると,第 2 中手骨底がやや凸です15)
さらに,大菱形骨との関節面もあり,骨性に安定していて,可動性はほどんどありません。

第 3 手根中手関節

  • 第 3 中手骨底(凹面)
  • 有頭骨(凸面)

第 3 中手骨底背面外側端の茎状突起によって運動が制限されます4)(図 1)。

関節面の形状は,第 2 手根中手関節に近いというような説明1)がある一方で,第 3 中手骨底が凹面,有頭骨が凸面という説明15)もあります。

第 4 手根中手関節

  • 第 4 中手骨底(凸面)
  • 有鉤骨,有頭骨(凹面)

有頭骨とは関節を形成しないこともあります15)

第 5 手根中手関節

  • 第 5 中手骨底(凸面)
  • 有鉤骨(凹面)

中手間関節

第 2 〜 5 中手骨底の相互に向かい合う面からなる関節です。

関節の分類

関節面の形状と動きによる分類については,文献による違いがあり,鞍関節9,15),平面関節16),鞍関節が変形した平面関節4)などと様々です。
また,中手骨側が凸面,手根骨側が凹面1,15)などといった,球関節であるかのような説明もあります。
典型的な形ではないため,分類が難しいようです。

第 2 手根中手関節

  • 可動性による分類:滑膜性関節(可動結合)
  • 関節面の形状と動きによる分類:分類は困難
  • 運動軸による分類:分類は困難
  • 骨数による分類:複関節

癒合してしまうこともあるようです15)

第 3 手根中手関節

  • 可動性による分類:滑膜性関節(可動結合)
  • 関節面の形状と動きによる分類:分類は困難
  • 運動軸による分類: 分類は困難
  • 骨数による分類:単関節

第 4 手根中手関節

  • 可動性による分類:滑膜性関節(可動結合)
  • 関節面の形状と動きによる分類:分類は困難
  • 運動軸による分類: 分類は困難
  • 骨数による分類:複関節または単関節

第 5 手根中手関節

  • 可動性による分類:滑膜性関節(可動結合)
  • 関節面の形状と動きによる分類:分類は困難
  • 運動軸による分類: 分類は困難
  • 骨数による分類:単関節

中手間関節

  • 可動性による分類:滑膜性関節(可動結合)
  • 関節面の形状と動きによる分類:非該当
  • 運動軸による分類:記載なし
  • 骨数による分類:単関節

ほとんど動かない関節(半関節)ですので,関節面の形状と動きによる分類は非該当です。

運動軸に関する記載は教科書等にはありません。

靱帯

靱帯に関する詳細な情報は教科書等にはなく,付着部や靱帯が緊張する動きなどは分かりません。

手根中手関節の靱帯

手根骨と中手骨底を結ぶ靱帯です。

  • 背側手根中手靱帯:第 2 〜 5 中手骨底背面と手根骨を結ぶ
  • 掌側手根中手靱帯:第 2 〜 5 中手骨底掌面と手根骨を結ぶ
  • 豆中手靱帯:豆状骨と第 5 中手骨底掌面を結ぶ

中手間関節の靱帯

第 2 〜 5 中手骨底間を結ぶ靱帯です。

  • 背側中手靱帯
  • 掌側中手靱帯
  • 骨間中手靱帯:中手間関節よりも遠位にある靱帯6)

関節周囲の結合組織(靱帯以外)

関節包

第 2 〜 5 手根中手関節と中手間関節の関節包は共通で,関節腔は互いに交通しています。
さらに,手根間関節(手根中央関節)や橈骨手根関節の関節腔とも交通しています。

関節包は関節面の縁に沿って付着17)しますが,それ以上の詳しい解説は見つかりません。

滑液包

教科書等に記載はありません。

腱鞘については,手関節の記事で列挙しています。

関節の安定化に作用する筋

教科書等に記載はありません。

運動

第 2・3 手根中手関節の運動

第 2・3 手根中手関節の動きはわずかです。
両者を比べた場合,第 2 手根中手関節の方がより動くとする文献2)と,第 3 手根中手関節の方がより動くとする文献9)があります。

屈曲・伸展が生じます。

第 4・5 手根中手関節の運動

屈曲・伸展が生じます。

こぶしを握ると,主に第 4・5 中手骨頭が動きます(図 2)。

手根中手関節の運動と中手骨頭の位置の変化
図 2: 手指の屈伸に伴い,手根中手関節の運動により,中手骨頭の位置が変わる2)

回旋や外転も生じるのですが,文献による違いがあり,説明も曖昧なものが多いため,この記事では省略します。

これらの動きにより,対立で母指と小指の指腹を合わせることができます。

  • 第 4 手根中手関節の屈曲
    • 屈曲の可動域:10 〜 15° 2)(他動・自動のどちらであるのかは不明)
    • 屈曲の制限因子:記載なし
    • 屈曲のエンドフィール:記載なし
  • 第 4 手根中手関節の伸展
    • 伸展の可動域(他動):0°
    • 伸展の制限因子:記載なし
    • 伸展のエンドフィール:記載なし
  • 第 5 手根中手関節の屈曲
    • 屈曲の可動域:25 〜 30° 2)(他動・自動のどちらであるのかは不明)
    • 屈曲の制限因子:記載なし
    • 屈曲のエンドフィール:記載なし
  • 第 5 手根中手関節の伸展
    • 伸展の可動域(他動):0°
    • 伸展の制限因子:記載なし
    • 伸展のエンドフィール:記載なし

第 5 手根中手関節の可動域は,第 4 手根中手関節の固定の有無で大きく変わります。
上述の可動域が,第 4 手根中手関節の固定を伴うものであるのかどうかは不明です。

中手間関節の運動

中手間関節の運動についての記述は教科書等にはほとんどありません。
運動を表す用語はないようです。
可動域も不明です。

第 4・5 手根中手関節の動きに伴い,第 4・5 中手骨底が掌背側に滑ります。

これらの動きは,背側中手靱帯,掌側中手靱帯,骨間中手靱帯により制限されます4)

しまりの肢位(CPP)と最大ゆるみの肢位(LPP)

教科書等に記載はありません。

関節内圧

教科書等に記載はありません。

作用する筋

教科書等に手根中手関節と中手間関節に作用する筋に関する記述はほとんどありません。

手指の屈伸に作用する筋(浅指屈筋,深指屈筋,指伸筋,小指伸筋など)が間接的に作用しているはずです。
また,第 5 中手骨に付着する尺側手根屈筋や尺側手根伸筋には手根中手関節に対する何らかの作用があるのかもしれません。

第 5 指の対立に作用する筋は以下のようになっています14)

第 5 指の対立に作用する筋

  • 主動作筋
    • 小指対立筋
  • 補助動筋
    • 小指外転筋
    • 短小指屈筋
    • 第 4 虫様筋

中手骨に付着する筋はこちら

主な血液供給

手根中手関節と中手間関節への血液供給については明記されていません。
手への血液供給は以下の動脈からです。

  • 橈骨動脈
  • 尺骨動脈

手根中手関節の近くには,深掌動脈弓,背側手根動脈網,背側中手動脈などがありますが,これらの動脈が手根中手関節や中手間関節へ血液を供給しているのかどうかは分かりません。

関節の感覚神経支配1)

ほとんどの場合,手の関節はその表面にある皮膚感覚髄節に分布する感覚神経線維から感覚支配を受けます。
その原則どおりならおおむね以下のようになるはずです。

  • 第 2 手根中手関節:橈骨神経(背側),正中神経(掌側),C6
  • 第 3 手根中手関節:橈骨神経(背側),正中神経(掌側),C7
  • 第 4 手根中手関節:橈骨神経(背側の橈側),正中神経(掌側の橈側),尺骨神経(掌背側の尺側),C8
  • 第 5 手根中手関節:尺骨神経,C8

おわりに

母指の手根中手関節と比べると,第 2 〜 5 手根中手関節については,教科書等では詳しく書かれていません。
特に学生だと,重要ではないという印象を受けるかもしれません。
しかし,第 4 〜 5 手根中手関節の可動域制限があると,手の機能はかなりの制約を受けます。
とても重要な関節です。

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関節運動学(関節包内運動)における関節面の動き
しまりの肢位とゆるみの肢位

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参考文献

1)P. D. Andrew, 有馬慶美, 他(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp277-336.
2)武田功(統括監訳): ブルンストローム臨床運動学原著第6版. 医歯薬出版, 2013, pp237-288.
3)米本恭三, 石神重信, 他: 関節可動域表示ならびに測定法. リハビリテーション医学. 1995; 32: 207-217.
4)博田節夫(編): 関節運動学的アプローチ AKA. 医歯薬出版, 1997, pp24-27.
5)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, pp644-663.
6)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002, pp200.
7)長島聖司(訳): 分冊 解剖学アトラス I (第5版). 文光堂, 2002, pp134-135.
8)富雅男(訳): 四肢関節のマニュアルモビリゼーション. 医歯薬出版, 1995, pp71-82.
9)荻島秀男(監訳): カパンディ関節の生理学 I 上肢. 医歯薬出版, 1995, pp132-165.
10)中村隆一, 斎藤宏, 他:基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版株式会社, 2013, pp230-245.
11)木村哲彦(監修): 関節可動域測定法 可動域測定の手引き. 共同医書出版, 1993, pp60-82.
12)板場英行: 関節の構造と運動, 標準理学療法学 専門分野 運動療法学 総論. 吉尾雅春(編), 医学書院, 2001, pp20-41.
13)大井淑雄, 博田節夫(編): 運動療法第2版(リハビリテーション医学全書7). 医歯薬出版, 1993, pp165-167.
14)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法(原著第9版). 協同医書出版社, 2015, 167-203.
15)片岡利行: 手指関節のバイオメカニクス. Jpn J Rehabil Med. 2016; 53: 765-769.
16)渡邊政男: 手指の基本的知識とセラピィ. 大阪作業療法ジャーナル. 2011; 24: 46-53.
17)Rauber-Kopsch解剖学
18)日本手外科学会(編): 手外科用語集(改訂第4 版通算第6版). ナップ, 2012, pp195.

2022年1月9日

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