視神経の走行:どこからどこまでが視神経なのか?

はじめに

視神経(第 II 脳神経 optic nerve)は視覚を司る感覚神経です。

眼球から出て視交叉までが視神経である7)ということになっています(図 1)。

視覚路の概念図
図 1: 視覚路の概念図

しかし,視神経の走行を細胞レベルでみると,視神経はもっと長いのでは?と思えてきます。

まずは視覚路を簡単に確認していきます。

視覚路を構成するニューロン3)

1 次ニューロン:視細胞

視細胞は光を感受する細胞です。
桿体(杆体)と錐体があります。
網膜内にあります。

2 次ニューロン:双極神経細胞

網膜内にあります。
短い神経です。

3 次ニューロン:神経節細胞

神経細胞体は網膜内にあります。
そして,神経節細胞の軸索が束になって眼球を出ていき,視神経となります。

4 次ニューロン:外側膝状体ニューロン

外側膝状体は視床の核です。
大脳皮質後頭葉の視覚中枢(有線野)へ投射します。

細胞レベルで視神経はどこからどこまでなのか?

視覚路を構成する 1 〜 4 次ニューロンのどれが視神経なのかがあやふやです。

眼球から視交叉までが視神経だとするのなら, 3 次ニューロンが視神経だということになりそうですが,3 次ニューロンは視交叉を超えて外側膝状体まで伸びています。
そして,1・2 次ニューロンが視神経に含まれるかどうかは分かりません。

グレイ解剖学4)では,「視神経は,網膜から始まる求心性(感覚性)神経線維が直接脳内の視中枢へ到達する経路にあたる」とあります。
1 〜 3 次ニューロンは網膜内にあり,どれをさしているのかは不明確です。
また,「視中枢へ到達する経路」ですので,おそらくは 4 次ニューロンも視神経に含めているようです。

おわりに

視神経の構造を正確に理解できていれば,どこからどこまでが視神経なのかということは,それをどう定義するのかというだけのことですので,あまり気にする必要はありません。

ただ,私は養成校の教員をしていたことがあるので,こういうことは気になります。
試験問題が作りにくくなりますので。

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参考文献

1)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002.
2)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008.
3)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp548-558.
4)岡田泰伸(監修): ギャノング生理学 原著25版. 丸善出版, 2017, pp211-237.
5)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, pp765.
6)本間研一(監修): 標準生理学 第9版. 医学書院, 2019, pp305-310.
7)馬場元毅: 絵でみる脳と神経 しくみと障害のメカニズム 第3版. 医学書院, 2012, pp160-163.

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2021 年 6 月 14 日

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