研究法

評価尺度の日本語版作成の標準的な手順

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日本語以外で作られた評価尺度の日本語版を作成するときの標準的な手順について説明します。
国際医薬経済・アウトカム研究学会によるもの1)を紹介します。

Patient Reported Outcomes(PRO : 患者報告アウトカム)が対象です。
PROとは,痛みの性質や治療の満足度などの主観的な指標を患者に答えてもらう評価尺度です。
このような評価はちょっとした言葉の違いが結果に大きく影響するため,翻訳によってオリジナル版とは異なるものになってしまう可能性があります。
そこで,標準的な手順を踏むことで,オリジナル版と同等であることを保証します。
たんにその分野の専門家が一人で翻訳するだけではだめなのです。

この記事は,日本語版を利用する側の視点で書いています。
また,日本語版だけでなく,例えばドイツ語を英語にするなど,全ての言語にあてはまる手順なのですが,用語がややこしくなるので,日本語版を作成する場合で説明します。

日本語版作成のステップ

ステップは以下の通りです。

  1. Preparation 準備
  2. Forward translation 順翻訳
  3. Reconciliation すり合わせ
  4. Back translation 逆翻訳
  5. Back translation review 逆翻訳の吟味
  6. Harmonization 暫定日本語版の作成
  7. Cognitive debriefing 認知デブリーフィング
  8. Review of cognitive debriefing results and finalization 認知デブリーフィングの結果の吟味と翻訳の最終化
  9. Proofreading 校正
  10. Final report 最終報告

各スッテプの概要

1. Preparation 準備

原作者に使用の許可を得ることなどです。

2. Forward translation 順翻訳

まずは翻訳するのですが,複数名が独立して行い,複数の翻訳版を作ります。
日本語を母国語とする者が行います。
そして,オリジナルの評価尺度を理解している者が行います。

3. Reconciliation すり合わせ

複数の翻訳を一つにまとめる作業です。

4. Back translation 逆翻訳

すり合わせでできた日本語版を英語に翻訳します。
英語を母国語とする者が行います。
そして,オリジナルの評価尺度を知らない者が直訳するという方法をとることが多いようです。

5. Back translation review 逆翻訳の吟味

逆翻訳版とオリジナル版を比べ,一致しないところを検討します。
原作者も参加します。

6. Harmonization 暫定日本語版の作成

これまでの過程を全て振り返り,暫定日本語版を作ります。
「Harmonization」にうまく合う日本語は見つけられませんでした。

7. Cognitive debriefing 認知デブリーフィング

パイロットテストとか患者パイロットとも呼ばれます。
「Cognitive debriefing」は「理解できるかどうかについて報告を受ける」というような意味です。
暫定日本語版をその評価尺度の対象者(患者など)で実際に行ってみて,理解してもらえるかどうかを確認します。

8. Review of cognitive debriefing results and finalization 認知デブリーフィングの結果の吟味と翻訳の最終化

認知デブリーフィングの結果をふまえて,翻訳の最終版を作成します。

9. Proofreading 校正

文字の誤りなどを修正します。
言葉の大きな変更はできません。

10. Final report 最終報告

日本語版作成のプロセスを論文などで報告します。
これがなければ,日本語版が信用できるものなのかが分からなくなります。

臨床家にとって重要なところ

日本語版を作成しようとする場合には,以上のステップをより詳しく知る必要があります。
しかし,出来上がった日本語版を使おうとするときには,そんなに詳しく知る必要はないでしょう。
最低限,逆翻訳というステップがあることを知っていればいいかもしれません。
使おうとしている評価尺度の日本語版作成についての論文があり,そこに逆翻訳というステップを踏んでいることが書いてあれば,その評価尺度の信頼性や妥当性は担保されていると信じていいでしょう。
理想的には,その論文の批判的吟味をする必要がありますが,臨床家には時間がないのも現実です。

おわりに

以上のような手順には様々な呼び名があるようです。
今回参考にした資料では,Cultural Adaptation1),言語バリデーション2)となっていました。
もっともよく使われる呼び名がどれなのかは調べていません。
また,手順のバリエーションもかなりあるようで,今回紹介したものが本当に標準的であるといえるのかどうかも調べてはいません。

参考文献

1)Wild D, Grove A, et al.: Principles of Good Practice for the Translation and Cultural Adaptation Process for Patient-Reported Outcomes (PRO) Measures: report of the ISPOR Task Force for Translation and Cultural Adaptation. Value Health. 2005; 8: 94-104.
2)http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/tiken/allotment/pdf/pro.pdf(2019年8月14日引用)
3)田中克宜, 西上智彦, 他: 日本語版 Central Sensitization lnventory(CSI)の開発:言語的妥当性を担保した翻訳版の作成. 日本運動器疼痛学会誌. 2017; 9: 34-39.

2019年8月14日

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