はじめに
膝打ち試験のやり方について詳しく解説します。
膝打ち試験とは
膝打ち試験は協調運動障害(失調症)の検査です。
座位で,被検者の膝(大腿)を手掌および手背で交互に素早く叩く動作を反復させ,上肢の動きを観察する検査です。
検査名に膝がついていますが,上肢の検査です。
主に,反復拮抗運動不能をみることになります。
検査方法の詳細
姿勢
転倒を防ぐため,まずは背もたれありの椅座位で行います。
背もたれなしの座位にすると,体幹が不安定となり難易度が上がります。
立位で行うこともできますが,文献等に立位で行うとの記載はなく,一般的ではありません。
しかし,立位で上肢をうまく使えるかどうかは,評価しておきたいところです。
一側ずつまたは両側
両側で行うと,左右差を見つけやすくなります。
ただし,健常者でも左右差はあります。
理学療法士であれば,一側ずつ行う場合と両側で行う場合とで比較することで,障害構造についての分析を行うべきです。
速さ
最初はゆっくり行わせ,次第に速くしていき,できるだけ速く行わせます。
ゆっくりすぎると,反復拮抗運動不能の検査ではなくなります。
回数
特に決まりはありませんが,少なくとも 10 回は反復させないと,症状は観察しにくいと思います。
また,10 回中 1 回程度しか異常な動きが出ないということもあります。
ただし,体力が低下した患者では10 回だけでもとても疲れてしまうことがあります。
観察するポイント
動作の円滑さ,スピード,リズム,叩く場所の変化,肘・肩の過度の動きなどを観察します。
正常であれば,同じ場所を一定のリズムで叩くことができ,肘の動揺も起こりません。
関連する検査
「手回内回外試験」は回内外を反復するだけで,膝は叩きません。
紛らわしいのですが,別の検査です。
一側の踵で反対側の膝を叩く動作を反復する検査を膝打ち試験と呼ぶ3)ことがあり,注意が必要です。
おわりに
判定の仕方や理学療法士ならではの考え方は,鼻指鼻試験についての記事で書いています。
その他の協調運動障害の検査についても以下の記事でまとめています。
スポンサーリンク参考文献
1)田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂18版). 南山堂, 2020, pp141-156.
2)内山靖: 協調運動障害, 理学療法ハンドブック改訂第4版第1巻. 細田多穂, 柳澤健(編), 協同医書出版社, 2010, pp605-635.
3)鈴木則宏(編): 神経診療クローズアップ. メジカルビュー社, 2011, pp162-171.
4)鈴木俊明(監修): 臨床理学療法評価法-臨床で即役に立つ理学療法評価法のすべて. エンタプライズ, 2005, pp252-263.
2021 年 3 月 26 日
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