第 2 肩関節の解剖と運動:基本情報のまとめ

はじめに

第 2 肩関節の解剖(構造)と運動について基本的なところをまとめます。

目次

第 2 肩関節を構成する骨と関節面

  • 肩甲骨の烏口肩峰アーチ
  • 上腕骨大結節

第 2 肩関節とは,烏口肩峰アーチと大結節の関係を関節にみたてた機能的関節(仮性関節,擬似関節)です。
軟骨でできた関節面はありません。

烏口肩峰アーチは,肩峰,烏口肩峰靱帯,烏口突起で作られます。

上肢挙上の方向や角度によっては,烏口肩峰アーチと向かい合うのは大結節とは限りません。
第 2 肩関節を構成するのは,大結節ではなく,上腕骨近位骨端の外側部分とする方がいいのかもしれません。

烏口肩峰アーチと上腕骨の間の空間は肩峰下腔と呼ばれます。

関節の分類

  • 可動性による分類:該当せず
  • 関節面の形状と動きによる分類:該当せず
  • 運動軸による分類:該当せず
  • 骨数による分類:該当せず

関節周囲の結合組織(靱帯など)

烏口肩峰靱帯

肩峰の前方から烏口突起の外側へ走る靱帯です。

帯状であったり,Y 字型で 2 本に分かれたりと,様々なバリエーションがあります17)

回旋筋腱板

主には上部にある棘上筋腱が関与します。

肩峰下滑液包

烏口肩峰アーチと回旋筋腱板の間にある滑液包です。

肩峰下滑液包の大きさには個人差があります。
肩峰下滑液包が三角筋の下まで広がった部分を三角筋下包と呼ぶ2)場合があります。
また,肩峰下滑液包と三角筋下包が分かれていて,区別できることもあります18)
図 1 は肩峰下滑液包の広がりの一例です。

肩峰下滑液包
図 1: 肩峰下滑液包19)

第 2 肩関節の安定化に作用する筋

上腕骨頭の上方への並進運動を制御するために,回旋筋腱板と上腕二頭筋長頭腱が重要な役割を担います。

第 2 肩関節の運動

上肢を挙上する際,第 2 肩関節では,大結節が烏口肩峰アーチの下をくぐり抜けます。
そのためには,肩甲上腕関節での外旋が必要です。

しまりの肢位(CPP)と最大ゆるみの肢位(LPP)

機能的関節にはありません。

作用する筋

基本的には,肩甲上腕関節に作用する筋と同じであるはずです。
今回調べた文献には,作用する筋についての記述はありません。

上腕骨に付着する筋はこちら
肩甲骨に付着する筋はこちら
鎖骨に付着する筋はこちら

主な血液供給

今回調べた文献では分かりませんでしたが,おそらくは肩甲上腕関節と同じです。
肩甲上腕関節に分布する動脈5)は以下の通りです。

  • 前上腕回旋動脈
  • 後上腕回旋動脈
  • 肩甲上動脈

関節の感覚神経支配

烏口肩峰靱帯の mechanoreceptor の神経支配は肩甲上神経16)であるということ以外は分かりませんでした。

その他の特徴

肩峰下インピンジメント症候群

肩峰下腔内の組織が第 2 肩関節(烏口肩峰アーチと上腕骨の間)で,衝突や挟み込みを生じる病態です。

おわりに

一般的な解剖学や運動学のテキスト1-3,5-7)だと第 2 肩関節という用語は使われないことが多いようですが,理学療法士であれば知っておく必要があると思います。

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滑膜関節の分類

関節運動学(関節包内運動)における関節面の動き

しまりの肢位とゆるみの肢位

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参考文献

1)P. D. Andrew, 有馬慶美, 他(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp137-197.
2)武田功(統括監訳): ブルンストローム臨床運動学原著第6版. 医歯薬出版, 2013, pp156-203.
3)米本恭三, 石神重信, 他: 関節可動域表示ならびに測定法. リハビリテーション医学. 1995; 32: 207-217.
4)博田節夫(編): 関節運動学的アプローチ AKA. 医歯薬出版, 1997, pp13-17.
5)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, pp574-583.
6)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002, pp185-188.
7)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp59.
8)富雅男(訳): 四肢関節のマニュアルモビリゼーション. 医歯薬出版, 1995, pp123-134.
9)荻島秀男(監訳): カパンディ関節の生理学 I 上肢. 医歯薬出版, 1995, pp2-73.
10)山嵜勉(編): 整形外科理学療法の理論と技術. メジカルビュー社, 1997, pp202-213.
11)中村隆一, 斎藤宏, 他:基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版株式会社, 2013, pp218-224.
12)木村哲彦(監修): 関節可動域測定法 可動域測定の手引き. 共同医書出版, 1993, pp34-45.
13)板場英行: 関節の構造と運動, 標準理学療法学 専門分野 運動療法学 総論. 吉尾雅春(編), 医学書院, 2001, pp20-41.
14)大井淑雄, 博田節夫(編): 運動療法第2版(リハビリテーション医学全書7). 医歯薬出版, 1993, pp165-167.
15)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法(原著第9版). 協同医書出版社, 2015.
16)山本昌樹: 肩関節複合体の正常運動学. 臨床スポーツ医学. 2019; 36: 132-142.
17)Rothenberg A, Gasbarro G, et al.: The Coracoacromial Ligament: Anatomy, Function, and Clinical Significance. Orthop J Sports Med. 2017; 5: 1-8. doi: 10.1177/2325967117703398.
18)石野辰夫: 肩関節運動における滑液包,とくに肩峰下包および三角筋下包の意義について. 新潟医学会雑誌. 1973; 87: 311-318.
19)牧内大輔, 筒井廣明: 肩関節鏡視に必要な解剖. 関節外科. 2008; 27: 10-16.

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2021 年 10 月 18 日

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