足背動脈は,足根骨上の領域で,長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間で触れることができます。
触れるのは簡単ですが,解剖学的に少しだけ掘り下げて,理解を深めたいと思います。
足背動脈の走行1,2)
足背動脈の走行を図1に示します。

前脛骨動脈と足背動脈はひと続きの動脈なのですが,どこで名前が変わるのかは明記されていません。
下伸筋支帯をくぐり抜けた先は確実に足背動脈です。
そして第1中足骨間隙(第1中足骨と第2中足骨の間)に達したところで,足背枝(第1背側中足動脈)と足底枝に分かれます。
足背動脈の触知
足背動脈があるのは,舟状骨,楔状骨の上です。
足全体を内側からみると,足根中足関節(リスフラン関節)のところで角度がついているので,足根骨がある領域はすぐに見つかります。
長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間を走っているので,それらの腱が目印になります。
慣れないうちは前脛骨筋腱を先に見つけるといいでしょう。
前脛骨筋腱から外側に指をずらしていくと長母趾伸筋腱が見つかります。
さらに外側にたどっていくと,長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間の,少しくぼんだようなところがあり,そこで足背動脈を触れることができます。
足背動脈触知の意義
拍動の減弱や消失があれば,閉塞性動脈硬化症などの末梢の循環障害を疑います。
ただし,足背動脈には変異があり,健常者の10%で触れることができません3)。
足関節上腕血圧比をとる場合,足背動脈が使われます。
図の補足説明
図は文献1を参考にして作図しています。
足背の筋膜を除去した層の図です。
足背動脈の枝のいくつかは省略しており,静脈と神経も省略しました。
足の内在筋も正確には描いていませんので,ご注意ください。
参考文献
1)越智淳三(訳):解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp208.
2)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008, pp134-135
3)岡安大仁, 道場信孝(編): JJNブックス バイタルサイン 診かたからケアの実際まで. 医学書院, 1995, pp18.
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