足背動脈の触知

はじめに

足背動脈の脈拍を触知する方法(位置)について,解剖学的に少し掘り下げながら解説します。

足背動脈の走行1,2)

足背動脈の走行を図 1 に示します。

足背動脈
図 1: 足背動脈の走行,文献 1)を参考にして作図,足背の筋膜を除去した層の図で,足背動脈の枝のいくつかは省略しており,静脈と神経も省略,足の内在筋も正確には描いていない

前脛骨動脈と足背動脈はひと続きの動脈で,距腿関節の関節裂隙を境にして足背動脈になります4)
そして第 1 中足骨間隙(第 1 中足骨と第 2 中足骨の間)に達したところで,足背枝(第 1 背側中足動脈)と足底枝に分かれます2)

足背動脈の触知

足背動脈は,足根骨から中足骨底の領域で,長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間で触れることができます。

足背動脈があるのは,舟状骨,楔状骨の上です。
足全体を内側からみると,足根中足関節(リスフラン関節)のところで角度がついていて,それよりも中枢側に舟状骨と楔状骨があります。

長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間を走っているので,それらの腱が目印になります。
慣れないうちは前脛骨筋腱を先に見つけるといいでしょう。
前脛骨筋腱から外側に指をずらしていくと長母趾伸筋腱が見つかります。
さらに外側にたどっていくと,長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間の,少しくぼんだようなところがあり,そこで足背動脈を触れることができます。

拍動を見つけたら,中枢側と末梢側にそれぞれたどっていき,最も強く触れるところを探すといいでしょう。

足背動脈触知の意義

拍動の減弱や消失があれば,閉塞性動脈硬化症などの末梢の循環障害を疑います。
ただし,足背動脈には変異があり,健常者の 10% で触れることができません3)

足関節上腕血圧比をとる場合,足背動脈が使われます。

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参考文献

1)越智淳三(訳):解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp208.
2)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008, pp134-135
3)岡安大仁, 道場信孝(編): JJNブックス バイタルサイン 診かたからケアの実際まで. 医学書院, 1995, pp18.
4)平田幸男(訳): 分冊 解剖学アトラス II (第6版). 文光堂, 2012, pp62-63.

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