膝窩動脈の触知

はじめに

膝窩動脈はやや触れにくい動脈です。
解剖学的に正確な知識を得たうえで練習するのが習得の近道です。

膝窩動脈の走行

膝窩動脈は大腿動脈の続きです。
大腿動脈が内転筋腱裂孔を通ったところから膝窩動脈になります。
そして,ヒラメ筋腱弓の高さで,前脛骨動脈と後脛骨動脈に分かれます(図 1)。

膝窩動脈の走行,内転筋裂孔からヒラメ筋腱弓まで
図 1: 膝窩動脈の走行1)

膝窩の解剖

次に,膝窩の構造を確認していきます(図 2)。

膝窩の構造と膝窩動脈
図 2: 膝窩の構造と膝窩動脈1)

膝窩は膝関節の後方にある空間です。
後方から見ると菱形です。

以下のもので成り立っています。

  • 上縁内側:半腱様筋,半膜様筋
  • 上縁外側:大腿二頭筋
  • 下縁内側:腓腹筋内側頭
  • 下縁外側:腓腹筋外側頭と足底筋
  • 膝窩の床:膝関節関節包(大腿骨)
  • 膝窩の天井(後壁):深筋膜

膝窩を通るのは膝窩動脈,膝窩静脈,脛骨神経,総腓骨神経などです。

神経がもっとも表層で,より外側を走ります。

膝窩動脈は半膜様筋縁の下方に現れます。
膝窩動脈がもっとも深層で,より内側を走ります。

膝窩静脈は,図 2 では 1 本だけ描かれています。
しかし,膝窩動脈をはさむようにして 2 本あるとしている文献2.3)もあります。

膝窩動脈の触知

膝窩動脈は,膝窩で触れることができるのですが,深部にあるため,やや触れにくい動脈です。

膝窩は筋に囲まれた領域ですので,筋が収縮して盛り上がってしまうと,指が入りにくくなることもありますので,力はできるだけ抜いてもらうようにします。

膝関節は屈曲位よりも,より伸展位の方が触れやすいと思います。
膝窩の菱形の開口部が折れ曲がって狭くなるイメージです。

膝窩動脈は腓腹筋の起始部にはさまれた領域で触れることができます。
腓腹筋の起始は大腿骨の内側上顆,外側上顆です。
つまり,膝の裏の大腿骨側で触れることができます。
これを間違う人が意外に多くて,脛骨側で探していて見つけられないということがあります。
被験者と向かい合い,屈曲した膝関節の裏に自然と手を伸ばすと,脛骨の裏を触ることになりますので,注意が必要です。

内側上顆,外側上顆の高さで指を膝の裏に回していきます。
両手の指を入れていくと,どちらかが膝窩動脈にあたりますので,見つかりやすいかもしれません。
また,第 2 〜 4 指の 3 本を揃えて進めていくと,いずれかの指に膝窩動脈があたります。
慣れれば 1 本の指でもすぐ見つかります。

指を進めていくと,まずハムストリングスの腱にあたります。
腱を超えると腓腹筋の筋腹があり,その筋腹を超えると指が深く入っていきます。
そこで膝窩動脈の拍動を触れることができます。

腓腹筋の起始部の触知を先に練習した方が,膝窩動脈の触知もマスターしやすいでしょう。

深部といってもそんなに深いわけではありません。
軽く押さえるだけで触れることができます。
強く押さえすぎると,すぐそばにある脛骨神経を圧迫して不快感を生じます。

膝窩動脈をピンポイントで触れるのではなく,両手で膝を包み込むようにして,指全体を密着させ,拍動を指全体で感じるという方法4)もあります。

膝窩動脈触知の意義

拍動の減弱や消失があれば,閉塞性動脈硬化症などの末梢の循環障害を疑います。
膝窩動脈の拍動が正常で足背動脈などのより末梢の動脈の拍動が弱ければ,病変はその間にあるということになります。

おわりに

他の動脈の触知に関する記事があります。

総頸動脈の触知
上腕動脈の触知
大腿動脈の触知
足背動脈の触知
後脛骨動脈の触知

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参考文献

1)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, pp506-507.
2)越智淳三(訳):解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp202.
3)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008, pp124-134.
4)岡田道雄: マスターすべき10の循環器病診察技術. 診断と治療. 2009; 97: 209-213.

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2021年2月19日

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