胸鎖関節:基本情報

はじめに

胸鎖関節 sternoclavicular joint の解剖(構造)と運動について基本的なこところをまとめます。

目次

胸鎖関節を構成する骨と関節面

  • 胸骨の鎖骨切痕
  • 第 1 肋軟骨上縁
  • 鎖骨の胸骨端(内側端)

胸骨の鎖骨切痕と第 1 肋軟骨上縁がつながって一つの関節面を構成します。

関節面は鞍状で,胸骨側の関節面の楕円の長軸が凹面,短軸が凸面になり,鎖骨側はそれに対応した形になります(図 1)。

胸鎖関節
図 1: 胸鎖関節

関節の分類

  • 可動性による分類:滑膜性関節(可動結合)
  • 関節面の形状と動きによる分類:鞍関節
  • 運動軸による分類:3 軸性
  • 骨数による分類:複関節

関節面の形状としては鞍関節ですが,関節包が緩いことと,関節円板があることにより,3 軸性の運動が可能です。

関節面の凹凸は浅く,形はいびつであり,個人差も大きいため,平面関節に分類することもあります12)

関節周囲の結合組織(靱帯など)

胸鎖関節周囲の結合組織
図 2: 胸鎖関節周囲の結合組織

前胸鎖靱帯・後胸鎖靱帯

関節包を補強するような靱帯です。
鎖骨の前後方向への逸脱を防ぎます。

鎖骨間靱帯

両側の鎖骨胸骨端をつなぐように胸骨頸切痕の上を走ります。
鎖骨下制で緊張するのを触知することができます。
鎖骨の上方への逸脱を防ぎます。

肋鎖靱帯

第 1 肋軟骨上縁と鎖骨下面の肋鎖靱帯圧痕(肋骨粗面)を結ぶ靱帯です。
太くて強い靱帯です。

前部線維束は肋軟骨から外側上方に走り,後部線維束は内側上方に走るため,前部線維束と後部線維束は交差します。
鎖骨の下制以外の全ての動きを制限します。

関節円板

胸鎖関節の関節腔を内側と外側に 2 分します。
関節円板の下端は胸骨の鎖骨切痕の外側や第 1 肋軟骨3)に付着し,上端は鎖骨胸骨端と鎖骨間靱帯に付着し,その他の部分は関節包の内側に付着します。

鎖骨側の付着がより強固であるため,鎖骨と関節円板の間での動きはあまり起こらない可能性があります15)
鎖骨と関節円板の間での動きについて後で述べますが,誤りの可能性もあり,注意が必要です。

胸鎖関節の安定化に作用する筋

  • 胸鎖乳突筋
  • 胸骨甲状筋
  • 胸骨舌骨筋
  • 鎖骨下筋

烏口鎖骨靭帯(菱形靱帯と円錐靱帯)

胸鎖関節の靱帯ではありませんが,肩甲骨の上方回旋に伴って緊張し,鎖骨の後方回旋を起こします。

胸鎖関節の運動

挙上と下制

前額面における前後軸での動きです。
前後軸はやや斜めで,後内側から前外側に走ります7)

凸面は鎖骨,凹面は胸骨です。

鎖骨の胸骨端と関節円板の間で生じる動きです2)

  • 挙上の可動域:35 〜 45°1),または 30 〜 45°2)
  • 挙上の制限因子:肋鎖靱帯,鎖骨下筋
  • 挙上のエンドフィール:結合組織性
  • 下制の可動域:10°1),または 5 〜 10°2)
  • 下制の制限因子:鎖骨間靱帯,第 1 肋骨2)
  • 下制のエンドフィール:結合組織性

前方突出と後退

水平面における垂直軸での動きです。
垂直軸はやや斜めで,上内側から下外側に走ります7)

凸面は胸骨,凹面は鎖骨です。

関節円板と胸骨の間で生じる動きです2)

  • 前方突出の可動域:15 〜 30°
  • 前方突出の制限因子:肋鎖靱帯,後胸鎖靱帯
  • 前方突出のエンドフィール:結合組織性
  • 後退の可動域:15 〜 30°
  • 後退の制限因子:肋鎖靱帯,前胸鎖靱帯
  • 後退のエンドフィール:結合組織性

後方回旋と前方回旋

矢状面における内外側軸での動きです。

関節円板の外側面に対して,鎖骨の胸骨端が回旋します2)

安静肢位から後方に回旋します。
前方回旋は安静肢位に戻るところまでです。

  • 後方回旋の可動域:20 〜 35°1),または 40 〜 50°2)
  • 後方回旋の制限因子:前胸鎖靱帯,肋鎖靱帯,鎖骨下筋14)
  • 後方回旋のエンドフィール:記載なし
  • 前方回旋の可動域:0°
  • 前方回旋の制限因子:記載なし
  • 前方回旋のエンドフィール:記載なし

しまりの肢位(CPP)と最大ゆるみの肢位(LPP)

  • CPP:上肢完全挙上位
  • LPP:肩甲骨が生理的肢位にあるとき

作用する筋

胸骨と鎖骨を結ぶ筋はありませんので,狭い意味での胸鎖関節に作用する筋はありません。
鎖骨は肩甲骨の動きに連動して動きます。

鎖骨に付着して,鎖骨を大きく動かす作用があるのは僧帽筋です。

胸骨に付着する筋はこちら
鎖骨に付着する筋はこちら
肋骨に付着する筋はこちら

その他の特徴

胸鎖関節は体幹と上肢を結びつける唯一の滑膜関節です。

安定性が高く,脱臼が起こりにくい関節です。
外力が加わった場合,胸鎖関節脱臼よりも鎖骨骨折の方が先に起こる傾向にあります。

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参考文献

1)P. D. Andrew, 有馬慶美, 他(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp144-146.
2)武田功(統括監訳): ブルンストローム臨床運動学原著第6版. 医歯薬出版, 2013, pp164-167.
3)博田節夫(編): 関節運動学的アプローチ AKA. 医歯薬出版, 1997, pp16-17.
4)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, pp577.
5)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002, pp185.
6)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp57.
7)富雅男(訳): 四肢関節のマニュアルモビリゼーション. 医歯薬出版, 1995, pp135-136.
8)荻島秀男(監訳): カパンディ関節の生理学 II 下肢 原著第5版. 医歯薬出版, 1995, pp46-49.
9)山嵜勉(編): 整形外科理学療法の理論と技術. メジカルビュー社, 1997, pp207.
10)中村隆一, 斎藤宏, 他:基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版株式会社, 2013, pp216-217.
11)木村哲彦(監修): 関節可動域測定法 可動域測定の手引き. 共同医書出版, 1993.
12)板場英行: 関節の構造と運動, 標準理学療法学 専門分野 運動療法学 総論. 吉尾雅春(編), 医学書院, 2001, pp20-41.
13)大井淑雄, 博田節夫(編): 運動療法第2版(リハビリテーション医学全書7). 医歯薬出版, 1993, pp165-167.
14)山本昌樹: 肩関節複合体の正常運動学. 臨床スポーツ医学. 2019; 36: 132-142.
15)那須久代, 二村昭元, 他: 上肢帯の構造と機能. 臨床スポーツ医学. 2018; 35: 1232-1237.

2021年9月24日
2021年9月15日

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