指輪っかテストについてを元の論文1)に基づいて解説します。
指輪っかテスト(finger-ring test)はサルコペニアのスクリーニングの検査です。
AWGS 2019 でも紹介されています。
指輪っかとは,両手の親指と人差し指で作った輪のことです(図 1)。
その指輪っかの周径と下腿の周径を比べる検査です。
器具を使わず,どこでも行うことができます。
検査方法
座位で行います。
膝の屈曲角度は 90 度となるようにします。
下腿は露出します。
利き足ではない方のふくらはぎの最も太いところを,指でそっと囲みます(図 2)。
強く圧迫して触れているところが凹まないようにします。
親指が後ろ側になります。
利き足は,歩き始めに最初に踏み出す足です3)。
判定
- 囲めない(bigger):ふくらはぎの方が太くて指が離れる
- ちょうど囲める(just-fit):ふくらはぎの周径と指輪っかの周径が同じで隙間がない
- 隙間ができる(smaller):ふくらはぎの方が細くて隙間ができる
結果の解釈
下腿周径を簡単に評価する方法であり,四肢の骨格筋量を間接的に測ることになります。
「囲めない」と較べて,「ちょうど囲める」や「隙間ができる」は,サルコペニア発症のリスク,要介護や死亡のリスクが高いと判定します。
当然,「ちょうど囲める」よりも「隙間ができる」の方がリスクは高くなります。
極端な浮腫や肥満がある場合,「囲めない」と判定されやすくなり,リスクを見落としやすくなります。
診断にも使えそうですが,感度・特異度の報告はありません。
フレイルの判定にも応用されつつあります4)。
リスクの具体的な数値
「囲めない」との比較になります。
サルコペニアを発症するリスク
ちょうど囲める:2.09 倍
隙間ができる:3.36 倍
要介護となるリスク
隙間ができる:1.96 倍
死亡のリスク
隙間ができる:3.16 倍
これらの数値を算出した研究1)の対象は,地域在住の 65 歳以上(平均年齢 72.8 ± 5.4)の男女です。
数値を当てはめることができるのは,このような人たちです。
補足説明
論文1)には図 4 のような第 3 〜 5 指を屈曲した指輪っかが載っています。
これだと第 3 〜 5 指がつかえて,指輪っかの周径が小さくなり,「囲めない」と判定されやすくなると思います。
また,論文1)には第 3 〜 5 指が伸展している図も載っており,異なる指輪っかが混在しています。
スクリーニング検査ですので,あまり細かいところは気にしなくてもいいのですが,私は,図 1 のように全部の指を伸ばした指輪っかに統一する方がいいと思っています。
利き足の定義について,開発者の論文1,2)には記載がありませんでした。
別の研究者による指輪っかテストを使った研究3)に,利き足の定義がありましたので,それを使いました。
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スポンサーリンク参考文献
1)Tanaka T, Takahashi K, et al.: “Yubi-wakka” (finger-ring) test: A practical self-screening method for sarcopenia, and a predictor of disability and mortality among Japanese community-dwelling older adults. Geriatr Gerontol Int. 2018; 18: 224-232. doi: 10.1111/ggi.13163.
2)田中友規: 地域におけるサルコペニアスクリーニング. Geriat. Med. 2019; 57: 1035-1039.
3)Hiraoka A, Izumoto H, et al.: Easy surveillance of muscle volume decline in chronic liver disease patients using finger-circle (yubi-wakka) test. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019;10: 347-354. doi: 10.1002/jcsm.12392.
4)Fujii H, Kodani E, et al.: “Yubi-wakka” (Finger-Ring) Test: A Tool to Detect Prefrailty in Elderly Populations, a Pilot Study. J Clin Med Res. 2019; 11: 623-628. doi: 10.14740/jocmr3917.
2020 年 9 月 25 日
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