老年医学

二次性サルコペニアについて

投稿日:2020年5月18日 更新日:

二次性サルコペニアの定義と問題点を解説します。

EWGSOP2による定義1)

2018年の European Working Group on Sarcopenia in Older People (EWGSOP2) では,サルコペニアを一次性サルコペニアと二次性サルコペニアに分類しています。

一次性のサルコペニアは加齢性のサルコペニアであり,加齢以外の原因が見当たらないサルコペニアです。

二次性のサルコペニアは,加齢以外の原因によるサルコペニアや,加齢に他の原因が加わって生じているサルコペニアです。

加齢以外の原因として,疾患,不動,栄養不良があります。

疾患としては,特に,悪性腫瘍や臓器不全などの炎症を生じる全身性疾患が重要です。
変形性関節症や神経疾患も関係します。

不動(身体活動の低下)は,座りがちなライフスタイルによって生じますし,疾患や障害によっても生じます。

摂取エネルギーやタンパク質の不足は,食欲不振,吸収不良,健康的な食事を入手できないこと,食べる能力の低下などによって生じます。
過栄養や肥満もサルコペニアに関係します。

AWGS 20192)ではどうなっているか

AWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)2019 では,悪液質や運動麻痺などの並存疾患によって骨格筋が減少している状態をサルコペニアとしていいのかどうかの議論があることを踏まえつつ,サルコペニアを以下のように定義しています。

「並存疾患とは関係なく,加齢によって,骨格筋の減少に加えて,筋力の低下と身体機能の低下の両方あるいはどちらかがある状態」

二次性サルコペニアのことは直接取り上げていませんが,以上の定義を踏まえると,AWGS 2019 は,二次性サルコペニアを現時点では否定しています。

国家試験問題

第54回理学療法士国家試験午前問題49に二次性サルコペニアがでてきます。

廃用症候群で正しいのはどれか。
1. 加齢による影響は少ない。
2. 二次性サルコペニアを認める。
3. 筋萎縮は上肢に強くみられる。
4. 進行しても摂食嚥下機能は保たれる。
5. 高齢者では高アルブミン血症を認める。

正解は 2 です。
しかし,この国家試験問題はかなり「グレー」です。

EWGSOP2による二次性サルコペニアの定義では,不動によるサルコペニアは二次性サルコペニアですから,2 が正解でいいでしょう。

しかし,AWGS 2019 による定義のみにしたがえば,この問題は正解がないことになります。

また,後藤ら3)は,サルコペニアと廃用性筋萎縮では,筋萎縮のタイプと骨格筋の表現系が異なるとしています(別の記事でまとめています)。
ただし,廃用性筋萎縮はサルコペニアに含めないと直接言及しているわけではありません。

おわりに

二次性サルコペニアについての意見の一致は得られていないといえそうです。
まずは,サルコペニアのメカニズムが解明されなければなりませんね。

参考文献

1)Cruz-Jentoft AJ, Bahat G, et al.: Sarcopenia: revised European consensus on definition and diagnosis. Age and Ageing. 2019; 48: 16–31.
2)Chen LK, Woo J, et al.: Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020; 21: 300-307.
3)後藤亜由美, 町田修一: サルコペニア研究の現状と臨床への応用. 理学療法学. 2018; 45: 332-341.

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