神経学的検査

母指さがし試験(関節定位覚)

投稿日:2017年12月26日 更新日:

母指さがし試験は関節定位覚検査ともいいます。
空間での手の位置が認識できているかどうかを調べる検査です。
よく行われる検査ですが,ベッドサイドの神経の診かたなどのメジャーな本にも載っていなかったりします。
知覚をみる・いかす-手の知覚再教育(中田眞由美・岩崎テル子著)に詳しく載っています。

検者は,一方の手で被検者の検査する側の手指を包むように握ります。
その際,母指ははずして,母指が伸展位となるようにします(いいね!の形です)。
被検者に母指を立てるよう指示する場合もありますが,筋収縮はできるだけ避けた方がいいので,他動で母指を立てるようにします。
目を閉じてもらいます。
検者の他方の手は被検者の肘のあたりを持ち,被検者の上肢をランダムに動かした後に,任意の位置に固定します。
この上肢を「固定肢」と呼びます。
固定肢はできるだけ力を抜いてもらうようにします。
セラピストであれば他動運動で筋緊張が分かります。
固定した後,固定肢の母指の先を反対側の母指と示指でつまんでもらいます。
このつまもうとする上肢を「運動肢」と呼びます。
固定肢の位置を1回毎に変更し,数回以上繰り返します。

この検査は固定肢の検査になります。
運動肢については,開眼で練習を行うことで,運動麻痺や協調運動障害がないことを確認できます。

判定は主にずれの大きさで行います。
正常:円滑,迅速に母指をつかむことができる。
1度:数cmずれるが,直ちに矯正して目標に到達する。
2度:数cm以上ずれ,固定肢の母指周辺を探り,運動肢が固定肢の一部に触れるとそれを伝うようにして母指に到達する。
3度:10cm以上ずれ,運動肢は空間を探り,容易に目的の固定肢に到達しない。運動肢が偶然に固定肢に触れなければ,患者は断念してしまう。

母指さがし試験は簡単な検査であり,被検者も理解しやすく,時間もかかりません。
固有感覚障害のスクリーニング検査として役に立ちます。
また,手を使用するとき,母指の位置の認識は重要であり,その認識ができているのかどうかを調べる検査として役に立ちます。

第50回理学療法士国家試験午前問題17に母指さがし試験が出題されています。

80歳の女性。多発性脳梗塞。動作の観察から,明らかな運動麻痺はみられないが軽度の感覚障害が予想される。軽度の認知症があり、口頭での詳細な手順の説明は理解しにくい。深部感覚検査として適切なのはどれか。
1.非検査肢の自動運動による模倣試験
2.非検査肢の他動運動による模倣試験
3.検査肢の自動運動による再現試験
4.検査肢の他動運動による再現試験
5.関節定位覚(母指探し)検査

正解は5です。
母指さがし試験は,口頭での詳細な手順の説明は理解しにくい人にとっても分かりやすい検査だということです。

検査の目的は別の記事にまとめています。

2017年12月26日

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