はじめに
足関節底屈筋群の筋力低下によって生じる異常歩行について解説します。
足関節底屈筋群の中では,底屈の作用が強い下腿三頭筋(ヒラメ筋,腓腹筋)と後脛骨筋の筋力低下が異常歩行の原因として重要です。
立脚中期での過度の背屈
立脚中期は,足関節が背屈することで,前方への動きが継続します(アンクルロッカー)。
そして,その足関節背屈の角度と速度を足関節底屈筋群が制御します。
足関節底屈筋群の筋力低下があると,足関節背屈を抑えきれず,過度の背屈が生じます。
足関節の背屈角度が大きくなれば膝関節もより屈曲します。
そして,背屈角度が大きくなるだけでなく,背屈速度も速くなります。
正常であれば,速度を抑えられた下腿に対して,膝より上の部分はより速く進み,その結果,膝関節が伸展します。
下腿が倒れる速度を抑えられなければ,膝関節は屈曲します。
膝関節が屈曲して,大腿四頭筋に対する筋力要求が大きくなるのですが,大腿四頭筋が付着している下腿が不安定なために,大腿四頭筋は十分な筋力を発揮することができません。
このような状況に耐える筋力が大腿四頭筋になければ,膝は過伸展位になります。
この場合,足関節は底屈位です(大腿四頭筋の筋力低下による異常歩行についてはこちら)。
立脚終期での踵離れが起こらない
立脚終期は踵が上がり,フォアフットロッカーが行われる相です。
筋力低下がそれほどでもなければ,一見普通に踵が上がりますが,よく見ると,背屈角度が正常よりも大きくなっていたりします。
筋力低下が重度であれば,踵は上がらず,足関節の背屈角度は大きくなります。
その結果,反対側の歩幅は短くなり,歩行速度は低下します。
踵が上がらないと,下肢は相対的にが短くなります。
それに対して,同側の骨盤落下と後方回旋が生じる場合があります。
前遊脚期
立脚終期での過度の背屈の程度によりますが,たいていは踵離れは遅れます。
過度の背屈が起こるタイミング
立脚終期でヒラメ筋に求められる筋力は,立脚中期のときの約 2 倍です。
立脚中期で異常はでなくても,立脚終期では異常が生じるということがあります。
また,筋力低下が重度であれば立脚中期に入ってすぐに背屈してしまいます。
大まかには,筋力低下が重度であるほど,過度の背屈は早く出現するといえます。
おわりに
立脚期における足関節の過度の背屈は,底屈筋群の筋力低下だけでなく,膝関節屈曲拘縮によっても起こります。
鑑別が大切です。
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スポンサーリンク参考文献
1)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017, pp111-185.
2)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006, pp111-157.
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2020 年 12 月 20 日
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