股関節伸筋群の筋力低下によって生じる異常歩行

はじめに

股関節伸筋群の筋力低下によって生じる異常歩行について解説します。

股関節が伸展するのは荷重応答期の途中から立脚終期の終わりまでです。
股関節伸筋が活動するのは遊脚期の後半あたりから立脚中期の始めごろまでです。
異常は遊脚終期から立脚中期に生じます。

遊脚終期〜初期接地

歩幅を短くすることで,次の立脚期で生じる股関節での屈曲モーメントを小さくしようとします。

股関節の屈曲は少なくなります。
いったん屈曲した後に伸展することもあります。

膝の伸展も少なくなります。
そして,膝の伸展を抑えれば,膝伸展の勢いに伴う股関節屈曲も抑えることもできます。

骨盤の前方回旋を少なくすることも歩幅を短くすることにつながります。

初期接地〜立脚中期

反対側下肢からの荷重の受け継ぎに伴い,股関節には床反力による屈曲モーメントが生じます。
その屈曲モーメントに抗する筋力がなければ異常が生じます。

床反力ベクトルの作用線が股関節の後ろを通るようにすれば,股関節に伸展モーメントが生じ,股関節伸筋群が活動せずにすみます。
骨盤と体幹の後傾によって上半身の重心を後ろに移動します。
肩関節伸展が伴うこともあります。

このような歩行を大殿筋歩行3)(大殿筋跛行4))と呼びます(図1)。

大殿筋歩行
図1

大殿筋歩行では,体幹を動かすことによってエネルギー消費は増えます。
腰背部痛もでやすくなります。

骨盤と体幹が前傾する場合もあります。
外力による股関節屈曲モーメントを股関節伸筋群が制御しきれず,骨盤が前傾します。
腰椎の前弯がうまくできなければ体幹も前傾します。
そして,骨盤の前傾によって股関節伸筋群は伸張され,その伸張によって発生する張力を利用します。

おわりに

大殿筋歩行は高齢者でよく見かける異常歩行ですし,学校で最初に習う異常歩行の一つですので,しっかりと理解しておきたいところです。

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参考文献

1)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017, pp111-185.
2)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006, pp111-157.
3)中村隆一, 齋藤宏, 他: 基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版, 2013, pp412-413.
4)野島元雄(監訳): 図解 四肢と脊椎の診かた. 医歯薬出版, 2000, pp135.

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2020 年 12 月 30 日
2020 年 12 月 31 日

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