大腿骨に付着する筋

はじめに

大腿骨に付着する筋についてまとめます。
一覧を示し,さらに部位別に分類します。
関連する国家試験問題についての考察もあります。

大腿骨に付着する筋の一覧

  1. 腸骨筋:小転子
  2. 大腰筋:小転子
  3. 大殿筋:殿筋粗面
  4. 中殿筋:大転子外側面
  5. 小殿筋:大転子前面
  6. 梨状筋:大転子上縁
  7. 内閉鎖筋:転子窩
  8. 上双子筋:転子窩
  9. 下双子筋:転子窩
  10. 大腿方形筋:大転子下部,転子間稜
  11. 外閉鎖筋:転子窩
  12. 内側広筋:転子間線下部,粗線内側唇
  13. 中間広筋:大腿骨体前面
  14. 外側広筋:大転子外側面,粗線外側唇
  15. 膝関節筋:大腿骨体前面下部
  16. 恥骨筋:恥骨筋線
  17. 長内転筋:粗線内側唇中部 1 / 3
  18. 短内転筋:粗腺内側唇上部 1 / 3
  19. 大内転筋:粗線内側唇の全長,内転筋結節
  20. 小内転筋:粗線内側唇上部
  21. 大腿二頭筋(短頭):粗線外側唇下部 1 / 2
  22. 腓腹筋:内側上顆(内側頭),外側上顆(外側頭)
  23. 足底筋:外側上顆
  24. 膝窩筋:外側上顆

付着部位での分類

小転子に付着する筋

  • 腸骨筋
  • 大腰筋

大転子に付着する筋

  • 中殿筋:外側面
  • 外側広筋:外側面
  • 小殿筋:前面
  • 梨状筋:上縁
  • 大腿方形筋:下部
  • 内閉鎖筋:転子窩
  • 上双子筋:転子窩
  • 下双子筋:転子窩
  • 外閉鎖筋:転子窩

転子間線に付着する筋

  • 内側広筋

転子間稜に付着する筋

  • 大腿方形筋

恥骨筋線に付着する筋

  • 恥骨筋

粗線内側唇に付着する筋

  • 短内転筋
  • 小内転筋
  • 大内転筋
  • 長内転筋
  • 内側広筋

殿筋粗面に付着する筋

  • 大殿筋

粗線外側唇に付着する筋

  • 外側広筋
  • 大腿二頭筋(短頭)

大腿骨体前面に付着する筋

  • 中間広筋
  • 膝関節筋

内側上顆に付着する筋

  • 腓腹筋(内側頭)
  • 大内転筋:内転筋結節

外側上顆に付着する筋

  • 腓腹筋(外側頭)
  • 足底筋
  • 膝窩筋

関連する国家試験問題

内閉鎖筋や外閉鎖筋の付着部についての理解が深まるきっかけになる問題を紹介します。

第 56 回理学療法士国家試験 午前 問題 53

大転子に付着する筋はどれか。2 つ選べ。

1.腸骨筋
2.大殿筋
3.中殿筋
4.梨状筋
5.内閉鎖筋

3 つ選べるため,この問題は不適切問題になりました。
3,4,5 から 2 つ選んでいたら正解です。

さて,中殿筋と梨状筋が大転子に付着するというのは確かですが,内閉鎖筋は本当に大転子に付着しているでしょうか?
この点について考えてみたいと思います。

おそらく,問題作成者は,中殿筋と梨状筋が大転子に付着し,内閉鎖筋は大転子ではなく転子窩に付着するとしたかったのではないでしょうか?

転子窩が大転子に含まれるのであれば,転子窩に付着する内閉鎖筋も大転子に付着することになります。
文献1)には,「大転子の尖端の内側面に凹窩があり,転子窩という」と書かれており,転子窩は大転子の一部であるということになっています。
しかし,転子窩は大腿骨頸の根元にあると捉えることもできます。
他の文献には転子窩について詳しく書かれておらず,疑問が残ります。

次に内閉鎖筋の付着部をできるだけ正確に確認してみましょう(図 1)。

内閉鎖筋,梨状筋,外閉鎖筋の付着部
図 1: 内閉鎖筋,梨状筋,外閉鎖筋の付着部7)

内閉鎖筋は転子窩に付着するとしている文献1,2,3,5)がある一方で,転子窩には外閉鎖筋が付着し,内閉鎖筋はそれよりも前方で大転子の内側に付着するとしている文献6,8)もあります。
転子窩はどこなのかと考える以前に,内閉鎖筋は転子窩には付着していないのかもしれないということです。
もしかしたら,内閉鎖筋の付着部も転子窩に含まれるということなのかもしれません。
また,転子窩の位置の曖昧さと同様で,内閉鎖筋の付着部は大転子と大腿骨頸の境界部分であると捉えることもできそうです。

話がややこしくなりましたが,内閉鎖筋が大転子に付着するとは言い切れないと思います。

こちらもおすすめ

寛骨に付着する筋

脛骨に付着する筋

腓骨に付着する筋

他の骨に付着する筋についてはこちらをご覧ください。

筋が付着しない骨の一覧

筋の起始停止(一覧表)

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参考文献

1)金子丑之助: 日本人体解剖学上巻(改訂19版). 南山堂, 2002.
2)河上敬介, 磯貝香(編): 骨格筋の形と触察法(改訂第2版). 大峰閣, 2013.
3)長島聖司(訳): 分冊 解剖学アトラス I 運動器(第5版). 文光堂, 2002.
4)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019.
5)中村隆一, 斎藤宏, 他:基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版株式会社, 2013.
6)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法(原著第10版). 協同医書出版社, 2022.
7)Georgiadis GM, Olexa TA, et al.: Entry sites for antegrade femoral nailing. Clin Orthop Relat Res. 1996; 330: 281-287. doi: 10.1097/00003086-199609000-00036.
8)Labronici PJ, Dos Santos Filho FC, et al.: Where is the true location of the femoral piriform fossa?. Injury. 2016; 47: 2749-2754. doi: 10.1016/j.injury.2016.10.016.

2022 年 11 月 28 日
2021 年 5 月 5 日

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