解剖生理

心臓の位置と傾き

投稿日:2020年5月29日 更新日:

はじめに

心臓の位置について,肋骨,椎骨,食道との関係や傾き(回転)などの重要なところを中心に,図を使って解説します。

概要

心臓は胸骨のすぐ後ろにあります(図1)。
心臓マッサージで胸骨を圧迫するのは,そこに心臓があるからです。

前額面での心臓と胸郭との関係
図 1: 前額面での心臓と胸郭との関係

心臓は傾いているため,心臓の 2 / 3 は左側にあります。

骨指標との関係

心底は,左側の第 2 肋間隙の高さにあり,これが心臓の上の境界です。
第 2 肋間隙は第 5 胸椎椎体の高さくらいです注1)
これより上は血管です。
図 1 は X 線像に近いイメージで心臓を描いていて,細かいところは省いています。
血管を認識していないと,心臓を実際よりも縦長であると思ってしまうかもしれません。

心尖は,第 5 肋間隙で左鎖骨中線のすぐ内側にあります。
この高さが,心臓の下の境界になります。
この高さは,第 9 胸椎椎体に相当します注2)

よって,心臓は第 5 胸椎椎体の高さから第 9 胸椎椎体の高さまでの領域にあるということになります。

右の境界は,胸骨右縁から 2 cm 外側で,第 3 胸肋関節から第 6 胸肋関節関節までです。

左の境界は,第3肋骨の胸肋関節から 2 cm 外側の点から,第5肋間で鎖骨中線の内側 2 cm の点までです。

横断面

図 2 は第 8 胸椎の高さでの水平断面です。

第 8 胸椎の高さでの胸郭の水平断面
図 2: 第 8 胸椎の高さでの胸郭の水平断面

心臓と他の臓器との関係がよく分かります。
解剖学実習で直接見ることができれば分かりやすいのですが,理学療法士はその機会が少ないのが現状です。
ですので,水平断面図での勉強は大切です。

心臓が胸骨のすぐ後ろにあることがよく分かります。

肺に挟まれています。
また,前面は,両側から肺が覆いかぶさっていますが,中央は空いています。
そこには右心室があり,右心室が前胸壁(胸骨)と接しています。
右心室がここにあるということをしっかり覚えていれば,心臓の傾き(回転)を理解しやすいかもしれません。

心臓が前で,食道と下行大動脈(胸大動脈)が後ろです。

ついでに覚えておきたいのが,喉頭部では気管が前で食道が後ろであることです。
食道が後ろであることは同じで,覚えやすいところです。
また,頸部の前面で気管軟骨を触ることができることを知っていれば,気管が前であることはすぐに分かります。

心臓の傾き(回転)

心臓の位置を理解するうえで,心臓の傾き(回転)をイメージできることは重要です。

心臓の縦軸は右上後方から左下前方に走り,左に回旋しているのですが,文章では分かりにくいので,図を描いて,それを回してみましょう。

心臓の正面

まずは,心臓の断面(前額断)を正面から見ます(図 3)。

心臓の前額断を正面に向けた図
図 3: 心臓の前額断を正面に向けた図

模式図で,血管は描いていませんし,形も正確ではありません。

さて,心臓の正面はどこかなんて,決まりがあるわけではなさそうです。
ここでは,心房,心室が均等に見える方向が正面だとしています。

右に傾く

心臓は右に傾いています(図 4)。
別の言い方をすると,前額面上を矢状軸で右に回転しています。

心臓が前額面上を矢状軸で右に回転している図
図 4: 心臓が前額面上を矢状軸で右に回転

左に回旋

そして,左を向きます(図 5)。
水平面上を垂直軸で左に回旋です。

心臓が水平面上を垂直軸で左に回旋している図
図 5: 心臓が水平面上を垂直軸で左に回旋

後ろに傾く

さらに,後ろに傾きます(図 6)。
矢状面上を水平軸で後方に回旋します。

心臓が矢状面上を水平軸で後方に回旋している図
図 6: 心臓が矢状面上を水平軸で後方に回旋

以上,3つの動きの組み合わせになります。

このような傾きの結果,右心室がもっとも前(前胸壁側)になります。
また,心尖も前胸壁側にあります。
左心房はもっとも深くにあり,食道と胸大動脈のすぐ前に位置することになります。

おわりに

まず最初に覚えておきたいところをまとめました。
初歩的なところですが,理学療法士国家試験にもある程度対応できるレベルかと思います。

注釈

1)心底の高さを椎体で表している文献を見つけることができませんでした。第2胸肋関節がある胸骨角が第4〜第5胸椎間の椎間円板の高さであることから,第2肋間隙は第5胸椎椎体の高さであると考えました。
2)同じく,心尖の高さを椎体で表している文献を見つけることができませんでした。第5肋間隙は剣状突起と胸骨体の結合部のあたりです。その剣状突起と胸骨体の結合部の高さは第9胸椎椎体です。

参考文献

1)金子丑之助: 日本人体解剖学下巻(改訂19版). 南山堂, 2008, pp14.
2)越智淳三(訳): 解剖学アトラス(第3版). 文光堂, 2001, pp214-227.

2021年1月22日
2020年5月29日

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