はじめに
痛みの強さの評価法として有名な VAS(Visual Analogue Scale 視覚的アナログ目盛り法)ですが,どの辺がアナログなのかはご存知でしょうか?
もし仮に Visual Digital Scale というものがあるのなら,それはどんな評価法になるでしょう?
デジタルとアナログの違い
デジタルとアナログという用語を端的に説明すると,デジタルは離散量,アナログは連続量です。
デジタルでは例えば 1,2,3 というような飛び飛びの数字を扱います。
1 と 2 の間の数字は扱いません。
それに対してアナログでは1,2,3 という数字だけでなく 1.2 や 1.19 など,どんな数字でも扱います。
デジタルの digit は指です。
指で 1 本,2 本と数えるのがデジタルで,指 1.2 本というのがあるのならそれはアナログです。
小数が出てきたらアナログというわけではありません。
1.1,1.2,1.3 となり,1.15 などの間の数字がないのであればデジタルです。
VAS はアナログなのか
さて,VAS は 100 mm の線で,左端を「痛みなし」,右端を「これ以上の強い痛みはない」として,痛みの強度を左端からの距離で表すものです。
被験者は線のどこにでも印をつけることができます。
ですので,評価の結果は 10 mm だったり 17 mm だったりと,0 から 100 の間の全ての数字になりえます。
よって VAS はアナログということになります。
もし線の上に 0 から 10 までの数字が書いてあり,その数字のあるところしか選べないのなら,それはデジタルになります。
もし仮に Visual Digital Scale というものがあるのなら,こういう評価になります。
ちなみに,VAS では左端からの距離を mm 単位で測定します1)。
通常の物差しでは mm よりも細かく測ることは難しいからです。
ということは,10.2 mmなどという結果はないということです。
すると,アナログではなくデジタルということになります。
線の上に印をつけたものはアナログデータですが,それを測定して10 mm などといったとたんにデジタルデータになってしまいます。
おわりに
デジタル,アナログという言葉の定義を正確に知らなくても理学療法は実施できますが,理系寄りの本を正確に理解するためには必要な知識です。
参考文献
1)堤文生: Visual Analogue Scale(VAS)視覚的アナログ目盛り法, 臨床評価指標入門 適用と解釈のポイント. 内山靖, 小林武, 他(編), 協同医書出版社, 東京, 2013, pp75-80.
2019 年 4 月 12 日
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