はじめに
「理学療法プロセス」というものを学校で必ず習うと思いますが,今ひとつピンとこないという方も多いようです。
理学療法プロセスとは何なのか?どこで使うのか?ということをまとめてみたいと思います。
目次
理学療法プロセスとは
理学療法を実施する手順や思考プロセスをモデル化したものが理学療法プロセスのモデルです。
ここでのモデルとは,問題とする事象(対象や諸関係)を模倣し,類比・単純化したものであり,事象の構造を抽象して論理的に形式化したものです。
模範や手本という意味のモデルではありませんし,手順書ではありません。
ですので,実際の理学療法は理学療法プロセスの通りには進みませんし,学生が理学療法プロセスの通りに進めていこうとして失敗することもあります。
理学療法プロセスをどこで使うのか
では,そのような理学療法プロセスに意味はあるのでしょうか?
理学療法プロセスをいつ,どこで使うのかを説明します。
まずは症例報告です。
複雑な思考過程をそのまま提示するのは難しいので,モデルに沿ってまとめます。
一番最初に理学療法を学ぶ時にも必要です。
いきなり臨床のありのままの姿だけを見せられても,すぐに理解することができません。
モデル化されたものを言葉で説明されることで,なんとなく全体をつかむことができます。
そして,自分が行った理学療法を振り返る時にも役に立ちます。
うまくいかない原因を分析する時に,要素に分解して,各要素ごとに分析する場合です。
理学療法プロセスの流れ
理学療法プロセスのモデルには様々なものがありますが,どれも似たようなものです(全てのモデルを見たわけではありませんが)。
自分が学校で習ったものを紹介します。
関西では,だいたい同じであるようです。
1. 間接的情報収集
事前の準備に相当するもので,処方箋がでてから対象者と接するまでに行うことです。
カルテ,主治医,看護師,ケアマネージャーなどから情報を集めます。
リスクや障害を予測し,今後の計画,特に初回の検査測定項目と手順を決めます。
2. 直接的情報収集
対象者と最初に対面した時の面接と観察であり,理学療法の導入にあたります。
挨拶,自己紹介,オリエンテーション,インフォームド・コンセント,契約,面接を行います。
同時に姿勢・動作観察などの多面的な観察を行います。
主訴,希望,おおまかな障害像を把握し,理学療法を始めるための事務的な手続きと,人間関係づくりを進めます。
3. 検査・測定
関節可動域測定などのいわゆる検査・測定,動作観察, ADL評価,問診などを行います。
様々な判断を行うための情報を集めます。
4. 統合と解釈
評価のまとめです。
全ての情報を統合して意味づけし,様々な判断(目標の設定,問題点の抽出,治療プログラムの立案など)を行います。
5. 目標の設定
目標を設定します。
短期目標と長期目標に分けて示すのが慣例です。
方向性と期限を明確にし,対象者を含めたリハビリテーションチーム全体で共通認識を持ちます。
6. 問題点の抽出
理学療法の治療対象を絞り込みます。
悪いところのリストではなく,理学療法士が解決できる課題のリストをつくります。
7. 治療プログラムの立案
問題点,目標に対応した治療プログラムをつくります。
目的,方法(姿勢,回数など)を明確にし,具体的で実現可能な計画を立てます。
リスク管理も治療計画に含めます。
8. 治療の実施
実際に治療を実施し,対象者の問題を解決します。
9. 再評価
評価(検査・測定から治療プログラムの立案まで)を再度行い,治療プログラム,問題点,目標の追加や修正を行います。
次の症例ではよりよい理学療法を行えるよう,自分が行ってきた理学療法を振り返ります。
おわりに
以上が,理学療法プロセスの概要です。
学生がこのようなことを学んだからといって,すぐに理学療法を実践できるわけではありません。
知識と実践の間には大きな壁があるような気がするのですが,その壁が何であるのかを,私はまだちゃんと理解できていません。
とりあえず言えることは「実際の理学療法では,評価,治療,再評価が同時進行で進む」ということです。
参考文献
1)石川朗, 内山靖, 他:臨床実習フィールドガイド改訂第2版. 南江堂, 2014.
2021 年 3 月 10 日
2021 年 1 月 25 日
2017 年 12 月 29 日
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