はじめに
距骨下関節 subtalar joint(talocalcaneal joint)の解剖(構造)と運動について基本的なところをまとめます。
距骨下関節の定義は文献によって異なりますし,定義が曖昧になっている文献もあります。
さらに,距踵舟関節や横足根関節との関係もややこしいところです。
この記事では,果間関節窩に支えらた距骨(talotibiofibular unit32))と距骨を除いた足部(calcaneopedal unit32))の間にある関節を距骨下関節とします。
骨でいうと,距骨に対して踵骨と舟状骨が関節を構成しています。
4 つの関節,すなわち後距踵関節,中距踵関節,前距踵関節10,11,25),距舟関節で構成されます。
目次
- 距骨下関節を構成する骨と関節面
- 関節の分類
- 距骨下関節の靱帯
- 距骨下関節の関節包
- 距骨下関節の滑液包
- 距骨下関節の運動
- しまりの肢位(CPP)と最大ゆるみの肢位(LPP)
- 関節内圧
- 距骨下関節に作用する筋
- 主な血液供給
- 距骨下関節の感覚神経支配
距骨下関節を構成する骨と関節面
後距踵関節,中距踵関節,前距踵関節,距舟関節の 4 つの関節があります。
後距踵関節(後方関節面)
- 距骨の後踵骨関節面(後方関節面):凹面
- 踵骨の後距骨関節面(後方関節面):凸面
後・中・前距踵関節のなかで関節面がもっとも大きいのは後距踵関節です1)。
踵骨の後距骨関節面は卵形でその長軸は前外側下方9,29)を向いています。
長軸では凸面,他軸では平面か軽い凹面です9)。
載距突起側に頂点を有する円錐の一部に一致する形状29)という記述もあります。
中距踵関節(中間関節面)
- 距骨の中踵骨関節面(中間関節面):凸面
- 踵骨の中距骨関節面(中間関節面):凹面
載距突起の上にある関節です。
踵骨の中距骨関節面は,長軸および短軸の両方で凹面です9)。
ほぼ平らである1)という記述もあります。
前距踵関節(前方関節面)
- 距骨の前踵骨関節面(前方関節面):凸面
- 踵骨の前距骨関節面(前方関節面):凹面
踵骨の前距骨関節面は,長軸および短軸の両方で凹面です9)。
ほぼ平らである1)という記述もあります。
距舟関節 talonavicular joint
- 距骨頭の舟状骨関節面6):凸面
- 舟状骨の距骨関節面(近位面):凹面
距舟関節は距骨下関節を構成する関節であると同時に,横足根関節を構成する関節でもあります。
距踵舟関節 talocalcaneonavicular joint
上記の分類とは異なるものです。
中距踵関節,前距踵関節,距舟関節の 3 つを合わせて距踵舟関節と呼びます。
距踵舟関節という分類を使う場合は,後距踵関節が距骨下関節と呼ばれます4,5,6,8,24)。
また,距踵舟関節を下前跳躍関節,後距踵関節(距骨下関節)は下後跳躍関節と呼ぶ場合6)もあります。
この距踵舟関節と距骨下関節を合わせた関節の呼び名については,subtalar joint complex30),下跳躍関節7),下部踝関節8)などがありますが,広く用いられているものではなさそうです。
- 距骨頭の舟状骨関節面6),距骨の前踵骨関節面,距骨の中踵骨関節面,底側踵舟靭帯関節面5,7)(凸面)
- 舟状骨距骨関節面,踵骨の前距骨関節面,踵骨の中距骨関節面,底側踵舟靭帯(凹面)
距踵舟関節の関節窩は acetabulum pedis と呼ばれます29,32)。
舟状骨距骨関節面,踵骨の前距骨関節面,踵骨の中距骨関節面,底側踵舟靭帯が,股関節の寛骨臼 acetabulum のような関節窩を形作り,距骨頭を底側から支えるような構造になっています。
二分靭帯も acetabulum pedis を構成するとしている文献35)があります。
前・中・後距踵関節の形態変異
3 つに分離するとは限らず,その形態には変異があります。
田中ら24)は以下の 5 つに分類しています。
- 踵骨の距骨関節面の 5 型分類
- Single Facet Type: 前・中・後関節面が連続してひとつの関節面を形成する
- Continuous Type: 後関節面は独立するが,前・中関節面は連続してひとつの滑らかな関節面を形成する
- Demarcated type: 後関節面は独立する。前・中関節面の周縁は連続して一続きの関節面を形成するが,前・中関節面の境界部に隆起やくびれがあり,前・中関節面を区別できる
- Separate Type: 前・中・後関節面がすべて分離して独立する
- No Anterior Facet Type: 後関節面は独立し,中関節面が存在するが,前関節面は存在しない
- 距骨の踵骨関節面の 5 型分類
- Single Facet Type: 前・中・後関節面が連続してひとつの関節面を形成する
- Smooth Type: 後関節面は独立するが,前・中関節面は連続してひとつの滑らかな関節面を形成する
- Angular Type: 後関節面は独立する。前・中関節面は連続してひとつの関節面となるが,その境界が角度をなし,前・中関節面を区別できる
- Grooved Type: 前・中・後関節面がすべて分離して独立する
- No Anterior Facet Type: 後関節面は独立し,中関節面が存在するが,前関節面が明確には認められず,距骨の踵舟靭帯関節面と区別できない
関節の分類
- 可動性による分類:滑膜性関節(可動結合)
- 関節面の形状と動きによる分類:顆状関節
- 運動軸による分類:1 軸性2,9)
- 骨数による分類:複関節
距骨下関節の形状は,関節面の形状と動きによる分類の定義にぴったりとあてはまりません。
文献によっても,顆状関節4,6),平面関節9,25),鞍関節18),車軸関節7)と様々です。
また,後距踵関節は球関節であるとする文献8)や,前・中・後距踵関節の 3 つをさして顆状関節であるとする文献11)もあります。
おそらく,顆状関節が一番近いと私は思います。
距骨下関節の靱帯
距骨下関節の靱帯の分類には文献による違いがかなりあります。
付着部が明記されていないことが多く,同じ靭帯で名前が違うのか,あるいは別の靭帯を示しているのかも分かりません。
この記事では,分類が細かく,付着部について比較的詳しく書かれている文献21,27)に基づいてまとめています。
関節包靭帯と副靭帯の区別については,情報が得られたもののみ記載しています。
外側距踵靭帯 lateral talocalcaneal ligament
- 近位付着部:距骨外側突起6,9,21)
- 遠位付着部:踵骨外側面6,9,21)
- 靱帯が緊張する動き:回内9)
距骨から斜め後下方に走る靭帯です9,21)。
踵腓靭帯の前下方で,踵腓靭帯と平行に走ります9,21)。
回内には水平面における外転が含まれます。
外転では踵骨の後方部分は内側に移動し,外側距踵靭帯は伸ばされます。
内側距踵靭帯 medial talocalcaneal ligament
- 近位付着部:距骨後突起の内側結節6)
- 遠位付着部:踵骨載距突起の後面と踵骨の内側面6,21)
- 靱帯が緊張する動き:回内13)
距骨から前方に走る靭帯です。
底側踵舟靭帯や三角靭帯とつながることがあります21)。
後距踵靭帯 posterior talocalcaneal ligament
- 近位付着部:距骨後突起の外側結節9)
- 遠位付着部:踵骨後部の上内側9,21,33)
- 靱帯が緊張する動き:記載なし
後距腓靭帯とはつながっています9)。
足根洞内にある靭帯
足根洞内にある靭帯として骨間距踵靭帯 interosseous talocalcaneal ligament, talocalcaneal interosseous ligament5)(骨間靭帯1,2))のみをあげている文献6,7)がある一方で,多くの文献は複数の靭帯をあげています。
そして,その靭帯の分類の仕方は様々です。
この記事では,根拠の記載がある解剖学の研究論文27)に基づいてまとめました。
足根洞 sinus tarsi は踵骨の踵骨溝と距骨の距骨溝によってできる漏斗状の空間です。
足根洞をさらに細分化する場合は,外側の広くて円錐状の部分のみを足根洞 sinus tarsi(tarsal sinus)と呼び,内側のより狭い管状の部分は足根骨管 canalis tarsi(tarsal canal)と呼びます22,27)。
前関節包靱帯 anterior capsular ligament of posterior talocalcaneal joint
後距踵関節の関節包が肥厚26,27)したもので,足根洞の後壁を垂直に走行します。
- 近位付着部:記載なし
- 遠位付着部:踵骨後距骨関節面前縁の中央からやや内側より(図 3)
- 靱帯が緊張する動き:回外
未発達で関節包と区別できないことがあります。
距骨下関節の運動軸より外側にあります。
足根骨管靱帯 ligament of the tarsal canal
狭義の骨間距踵靭帯です。
足根洞の深部から足根骨管にかけて斜走します。
関節包とは脂肪組織で隔たれています。
- 近位付着部:距骨の距骨溝内で中踵骨関節面のすぐ後ろにある細長い隆起22,27)
- 遠位付着部:踵骨の踵骨溝のほぼ中央(図 3)
- 靱帯が緊張する動き:いかなる肢位でも緊張を保つ
距骨から踵骨に向かって下外側に走ります22)。
踵骨側の付着部については,文章による説明がなく,図に示された位置を「踵骨溝のほぼ中央」と表現してみました。
踵骨溝がどこからどこまでなのかが不明確であるため,中央という表現が正しいのかどうかは分かりません。
図 3 でご確認ください。
2 本(ときに 3 本)の線維束で構成されます。
距骨側では距骨溝内に前外側線維束 anterolateral bundle と後内側線維束 posteromedial bundle が内外側に並んで付着します。
踵骨側では前後に分離して付着します。
前外側線維束は前方へ走行して中距骨関節面に近接して付着します。
後内側線維束は後方に伸びて後距骨関節面の前方に付着します。
骨間距踵靭帯を前後で分けている文献1,2,9)もありますが,上述の前外側線維束と後内側線維束との関係は不明です。
距骨下関節の運動軸上にあります。
回内で緊張するという説22)もあります。
深内側距踵靭帯 deep medial talocalcaneal ligament
足根骨管の内側の開口部にある靭帯です。
- 近位付着部:距骨の後踵骨関節面の前内側縁
- 遠位付着部:踵骨の後距骨関節面前内側縁(図 3)
- 靱帯が緊張する動き:記載なし
距骨から踵骨に向かって外下方および前方に走ります。
欧米ではこの靭帯についての記載がほとんどなく,足根骨管靱帯に含めていると考えられる27)そうです。
頸靱帯 cervical ligament21,27)
足根洞の前外側部で下伸筋支帯の前方にある靭帯です。
頸部靭帯1)あるいは距踵頸靭帯2)とも呼ばれます。
- 近位付着部:距骨頸部の下外側部
- 遠位付着部:踵骨背側(図 3)
- 靱帯が緊張する動き:回外
距骨から踵骨に向かって外下方および後方へ走ります。
関節外にあります27)。
2枚の線維板から構成されます。
距骨への付着部には結節22)(tuberculum cervicis tali27))があると書かれていることもありますが,そのような結節はないことの方が多い27)ようです。
踵骨への付着部は,二分靭帯,下伸筋支帯,短趾伸筋のそれぞれの付着部に囲まれた領域です。
下伸筋支帯の付着部の前方27)で,短趾伸筋付着部の内側22)です。
距骨下関節の運動軸よりも外側にあります。
頸靱帯と足根骨管靱帯をつなぐ線維があったり,二つの靭帯が連続してつながっていたりすることがあります22)。
距舟靭帯 talonavicular ligament5,33)
距舟関節の背側にある幅の広い靭帯です。
- 近位付着部:距骨頸
- 遠位付着部:舟状骨の背側
- 靱帯が緊張する動き:回外9)
背側の関節包を補強する21)とありますので,関節包靭帯であるのかもしれません。
底側踵舟靭帯 plantar calcaneonavicular ligament
踵骨と舟状骨をつなぐ靭帯であり,距骨下関節の靭帯ではありませんが,距踵舟関節の関節窩 acetabulum pedis を構成する靭帯としてとりあげます。
スプリング靭帯 spring ligament(バネ靭帯)とも呼ばれます。
スプリングという名前ですが,いわゆるバネのような弾性があるわけではありません。
- 近位付着部:踵骨の載距突起(中距骨関節面7))
- 遠位付着部:舟状骨の内側底面1)(舟状骨粗面6))
- 靱帯が緊張する動き:横足根関節の回内9)
背面(距骨頭側になる面)は線維軟骨1,2,7)で覆われています。
内縁で脛骨スプリング靭帯と合流します21)。
以下の 3 つの靭帯をあわせて,Inferior calcaneonavicular ligament (spring ligament complex) という場合36)があります。
上述の底側踵舟靭帯 plantar calcaneonavicular ligament と同じものを細分化しているのか,あるいは,別の靭帯も含めているのかは分かりませんでした。
Superomedial calcaneonavicular ligament
- 近位付着部:踵骨の中距骨関節面の前内側縁
- 遠位付着部:舟状骨の上内側面
- 靱帯が緊張する動き:記載なし
踵骨から舟状骨に向かって前上内側方向に走ります。
距骨頭と接するところは軟骨で覆われています。
後脛骨筋腱と接しており,その部分も軟骨で覆われています。
Medioplantar oblique calcaneonavicular ligament
- 近位付着部:踵骨の前距骨関節面と中距骨関節面の間(coronoid fossa)
- 遠位付着部:舟状骨粗面のすぐ下
- 靱帯が緊張する動き:記載なし
1 ~ 3 本の束で構成されます。
踵骨から舟状骨に向かって前内側方向に走ります。
近位付着部は,後述の inferoplantar longitudinal calcaneonavicular ligament の付着部のすぐ下でわずかに後方です。
Medioplantar oblique calcaneonavicular ligament の外側縁とinferoplantar longitudinal calcaneonavicular ligament とは脂肪で隔てられます。
内側縁は superomedial calcaneonavicular ligamentと切り離せないことがあります。
Inferoplantar longitudinal calcaneonavicular ligament
- 近位付着部:踵骨の前距骨関節面と中距骨関節面の間(coronoid fossa)
- 遠位付着部:舟状骨底側面の外側にある突起(navicular beak)
- 靱帯が緊張する動き:記載なし
距腿関節にも属する靭帯
距腿関節についての記事で解説しています。
- 三角靭帯(脛舟靭帯,脛骨スプリング靭帯,脛踵靭帯)
- 踵腓靭帯
距骨下関節の関節包
後距踵関節と距踵舟関節(中距踵関節,前距踵関節,距舟関節)のそれぞれで独立した関節包(関節腔)をもちます1,2,6,21)。
高齢者では,後距踵関節の関節腔が距腿関節の関節腔と通じることがあります6)。
関節包は軟骨の境界のすぐ近くに付着します7)。
底側踵舟靭帯のあるところでは,骨の軟骨の境界からは離れます。
距骨下関節の滑液包 6)
足部の滑液包は,どの関節に属しているのかを決められないものが多かったため,距腿関節についての記事で一括しています。
距骨下関節の運動
足部の運動を表す外がえし・内がえしと回内・回外という用語の定義は統一されていません。
この記事では,前額面運動を外がえし・内がえし,三平面運動を回内・回外としています。
詳しくは別の記事で解説しています。
距骨下関節では回内と回外が生じます。
回内は三平面運動で足底が外側を向く動きです。
回外は三平面運動で足底が内側を向く動きです。
外転と内転,回内と回外が可能としている文献11)がありますが,その文献のみであり,誤りではないかと思います。
三平面運動の可動域を表現するための統一された方法はなく,また,通常の臨床場面で簡単に実施できる方法もありません。
距骨下関節の可動域測定は,後足部の前額面での外がえしと内がえしを測定することで代用します1,13)。
前額面での動きのみを測定していますので,距骨下関節の真の可動域ではありません。
以下に示す可動域は前額面での測定です。
また,複数の文献の情報を集めたものです。
測定方法や,自動・他動の区別などの詳しい情報が全て書かれている文献はありませんでした。
内がえしと外がえしの自動での可動域の比率はおおむね 2:1 です1)。
日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会,日本足の外科学会による関節可動域表示ならびに測定法3)では,移動軸が足底面になっており,前足部の動きを見ていますので,距骨下関節以外の関節を含んだ測定です。
回内と回外
- 回内の可動域:5 〜 20° 1,2,29,31)
- 回内の制限因子:踵骨と距骨との接触,または三角靭帯,内側距踵靭帯,外側距踵靭帯,踵腓靭帯,後脛骨筋の緊張9,13)
- 回内のエンドフィール:骨性または結合組織性13)
距骨の後踵骨関節面は踵骨の後距骨関節面の「坂を下る9)」ように動き,足根洞に衝突します9,13)。
回内では三角靭帯の前方部分が緊張します9)。
- 回外の可動域:22.6 〜 40° 1,2,29,31)
- 回外の制限因子:関節包外側部,踵腓靭帯,前関節包靱帯,頸靱帯,距舟靭帯9,13,27)
- 回外のエンドフィール:結合組織性13)
回内と回外の運動軸
運動軸は前額面,矢状面,水平面の全ての面に対して傾いており,踵の後外側1,2)(または踵骨隆起外側突起9,20))から前内上方向に向かい,足根骨管靱帯27)を抜けて,距骨頸部の上内側面2,9,20)(または距骨頭10))に至ります。
Isman19) による報告では,足の中心線(第 2 趾と第 3 趾の間から踵骨の中央を通る線)と距骨下関節の運動軸を水平面に投影した線の角度は,平均 23°,標準偏差 ± 11°,最小値 4°,最大値 47° です(図 4)。
また,距骨下関節の運動軸と水平面がなす角度は,平均 41°,標準偏差 ± 9°,最小値 20°,最大値 68° です(図 5)。
その他に,距骨下関節の運動軸と矢状面がなす角度は 16° 1,10,21)あるいは 25° 2),そして,距骨下関節の運動軸と水平面がなす角度は 42° 1,10,21)あるいは45° 2)であるとの報告があります。
平均値は似たような数値ですが,個人差はかなりあるようです。
距骨下関節の運動軸は Henke 軸と呼ばれることがあります。
荷重下での動き10,20)
荷重下で足部が固定されている場合,距骨下関節の運動によって下腿が回旋します。
距骨下関節の回内で足部のアーチは低くなり下腿は内旋します。
距骨下関節の回外で足部のアーチは高くなり下腿は外旋します。
しまりの肢位(CPP)と最大ゆるみの肢位(LPP)
- CPP:最大回外位8)
- LPP:最大回内と最大回外の中間位8)
関節内圧
今回調査した文献には距骨下関節の関節内圧に関する記述はありませんでした。
距骨下関節に作用する筋
距骨に筋が付着しないため,距骨下関節のみに作用する筋はありません。
解剖学的肢位で筋が求心性収縮をしたときの作用が主です。
主動作筋と補助動筋に分けていますが,その区別の基準は決まっていないようです。
ここでは主に基礎運動学11) を参考にして分けています。
はっきりしないものは補助動筋にしました。
距骨下関節の運動軸よりも外側にある筋は回内に作用し,内側にある筋は回外に作用します。
距骨下関節の回内に作用する筋
- 主動作筋
- 長腓骨筋
- 短腓骨筋
- 補助動筋
- 第三腓骨筋
- 長趾伸筋
腓腹筋は回内に作用する16,34)という記述がありますが,腓腹筋の付着部と距骨下関節の運動軸との関係より,回内の作用は弱そうですし,回外に作用する可能性もあると考えています(詳しくは こちら)。
距骨下関節の回外に作用する筋
- 主動作筋
- 後脛骨筋
- 長趾屈筋
- 補助動筋
- 前脛骨筋
- 長母趾伸筋
- 長母趾屈筋
- ヒラメ筋
長母趾伸筋のモーメントアームは短いため,距骨下関節の回外にはほぼ関与しません1)。
足底筋の距骨下関節に対する作用については,今回調べた文献には記載がありませんでした。
距骨下関節の安定化に作用する筋
今回調べた文献には距骨下関節の安定化に作用する筋についての記述はありませんでした。
脛骨に付着する筋はこちら。
腓骨に付着する筋はこちら。
足根骨に付着する筋はこちら。
中足骨に付着する筋はこちら。
足の指骨に付着する筋はこちら。
主な血液供給21)
- 後脛骨動脈
- 前脛骨動脈 〜 足背動脈
- 腓骨動脈
距骨下関節の感覚神経支配
距骨下関節を支配する感覚神経を明記している文献はありませんでした。
いくつかの曖昧な記述6,33)より,おそらくは以下の神経です。
- 内側足底神経
- 外側足底神経
- 深腓骨神経
髄節レベルについては,「それぞれの主要な関節は,おもに S1 と S2 の脊髄神経根に由来する複数の感覚神経の支配を受ける1)」と書かれています。
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スポンサーリンク参考文献
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36)Melão L, Canella C, et al.: Ligaments of the transverse tarsal joint complex: MRI-anatomic correlation in cadavers. AJR Am J Roentgenol. 2009; 193: 662-671. doi: 10.2214/AJR.08.2084.
2023 年 4 月 30 日
2023 年 4 月 8 日
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