恥骨結合の解剖と運動:基本情報のまとめ

はじめに

恥骨結合 pubic symphysis の解剖(構造)と運動について基本的なところをまとめます。

恥骨結合関節 pubic symphysis joint1) とも呼ばれます。

目次

恥骨結合を構成する骨と関節面

  • 恥骨の恥骨結合面6,16)

恥骨結合面の形状には年齢による変化があります。
若年者の恥骨結合面は中央が盛り上がり,数条の著しい横溝があります。
加齢にしたがい,横溝は不明瞭となり,結合面は平坦となり,ついには周囲よりやや陥凹します16)

関節面は硝子軟骨によって覆われています1,2,5-7,16,18)

左右の恥骨結合面は,線維軟骨性の恥骨間円板 interpubic disc によって結びつきます1)(図 1)。
恥骨間円板を骨間靭帯9)と呼ぶこともあります。
恥骨間円板は腹直筋,錐体筋,内腹斜筋の付着によって補強されています1,2)

恥骨間円板には薄い裂け目のような腔がみられることがあり7,9,16,17),恥骨結合腔7)などと呼ばれます(図 1)。
10 歳未満で出現することは稀です18)
この腔の内面に滑膜はありません16,17,18)

恥骨結合
図 1: 恥骨結合の前額断面(文献 9 を参考にして作図)

関節の分類

  • 可動性による分類:不動関節1)または半関節9,18)
  • 骨間に介在する組織の種類による分類:線維軟骨結合5,11)
  • 関節面の形状と動きによる分類:非該当
  • 運動軸による分類:非該当
  • 骨数による分類:単関節

恥骨結合の運動軸について書いている文献は見つかりませんですた。

関節分類についての解説は こちら

関節面の形状と動きによる分類については こちら

恥骨結合の靱帯

上恥骨靭帯 superior pubic ligament5,6,7,9,11,16,17,18)

上方靭帯9)とも呼ばれます。

  • 付着部:恥骨結節18)
  • 靱帯が緊張する動き:記載なし

恥骨結合の上縁を横走する靭帯です6)(図 1)。

恥骨弓靱帯 arcuate pubic ligament6,7,9,11,16,17,18)

下恥骨靭帯 inferior pubic ligament5),下部靭帯9),恥骨下弓靱帯9)とも呼ばれます。

  • 付着部:恥骨下枝18)
  • 靱帯が緊張する動き:記載なし

恥骨結合の下縁で,恥骨弓(恥骨下角)に沿って弓状に走る靭帯です6,16)(図 1)。

上部で恥骨間円板と融合しています18)

Anterior Pubic Ligament9,18)

  • 付着部:記載なし
  • 靱帯が緊張する動き:記載なし

恥骨結合の前方にある靱帯です。

この靭帯について,矛盾する可能性のある以下のような記述があります。

Gray18) は,Anterior Pubic Ligament の浅層の線維は斜めに走行して外腹斜筋の腱膜や腹直筋の起始腱の線維と交差し,深層の線維は恥骨結合部を横切るように走り,恥骨間円板と融合するとしています。

カパンディ9)は,「横と斜めに走る線維からなる厚い前方の靱帯で,腹横筋,腹直筋,錐体筋,内腹斜筋および長内転筋からなる腱膜展開部が恥骨結合の前で交叉しており,緻密な線維性のフェルト様の網を形づくっている」としています。

また,恥骨間円板は腹直筋,錐体筋,内腹斜筋の付着によって補強されている1,2)という記述もあります(前述)。

Posterior Pubic Ligament9,18)

カパンディ9)は後靭帯と呼んでいます。

  • 付着部:記載なし
  • 靱帯が緊張する動き:記載なし

恥骨結合の後方にある靱帯です。

散在する少数の細い線維で構成されています18)
また「骨膜と結合している線維性の膜9)」との記述もあります。

分担解剖学16)には「恥骨間円板の前後面は恥骨の骨膜につづく線維膜で被われる」との記述があり,Anterior Pubic Ligament と Posterior Pubic Ligament を指していると思われます。

恥骨結合の関節包

今回調査した文献において,滑膜がない16,17,18)ということ以外に,恥骨結合の関節包に関する記述はありません。

恥骨結合の滑液包

今回調査した文献には恥骨結合の滑液包に関する記述はありません。

恥骨結合の運動

今回調査した文献において,恥骨結合で生じる運動として,並進運動と回転運動が測定されていました。
しかし,その方向で生じた運動を測定しただけであり,運動軸や最大可動域は不明であり,恥骨結合で生じうる全ての運動が解明されているわけではないようです。
制限因子,エンドフィール,関節包内運動についての記述もありません。
恥骨結合の運動を表す統一された用語もないようです。

仙腸関節と連動して動くはずですが,そのことに関する記述はありません。

臨月近くや分娩中9)では,恥骨結合の運動は大きくなります。

歩行時,または妊娠中や出産時,恥骨結合は骨盤環全体にわたってストレス解放に貢献します1)

2つの論文における測定値を紹介します。

Walheim ら21)の報告

  • 前額軸の方向(牽引と圧迫の方向)での並進運動:男性 0.5 mm,女性 0.9 mm
  • 垂直軸の方向での並進運動:男性 1.0 mm,女性 1.6 mm
  • 矢状軸の方向での並進運動:男性 0.7 mm,女性 0.6 mm
  • 前額面での回転運動:男性 0.4°,女性 0.4°
  • 矢状面での回転運動:男性 0.3°,女性 0.6°

水平面での回転運動は測定していません。

健常成人における測定です。
座標軸を骨盤前傾の方向に 45° 傾けています。
背臥位で股関節 90° 屈曲位から最終域まで外転し,立位となり片足立ちを左右交互に行い,さらに歩行を行うという一連の動きの中で測定しています。
他動での最大可動域を測定したのではありません。

Garras ら22)の報告

健常成人における測定です。
両脚立位から片脚立位になったときに生じる恥骨結合の垂直方向の動きを,骨盤の正面 X 線写真で測定しています。
左右の片脚立位のそれぞれの変位量を合計しています。

両脚立位から片脚立位になることで,足を上げている側の恥骨が低くなります。

  • 男性:1.4 ± 1.0 mm
  • 未産婦:1.6 ± 0.8 mm
  • 経産婦:3.1 ± 1.5 mm

数値は平均値と標準偏差です。

しまりの肢位(CPP)と最大ゆるみの肢位(LPP)

  • CPP:記載なし
  • LPP:記載なし

今回調査した文献には恥骨結合のしまりの肢位と最大ゆるみの肢位に関する記述はありません。

関節内圧

恥骨結合は滑膜関節ではないので,関節内圧という概念は適用されません。

恥骨結合に作用する筋

恥骨結合は受動的に動く関節であり,恥骨結合の主動作筋はないはずですが,そのことについての記述は,今回調査した文献にはありません。

恥骨間円板は腹直筋,錐体筋,内腹斜筋の付着によって補強されている1,2)という記述があり,これらの筋は恥骨結合の安定化に作用する可能性がありますが,そのことについての記述は,今回調査した文献にはありません。

寛骨に付着する筋はこちら

主な血液供給

今回調査した文献には恥骨結合への血液供給に関する記述はありません。

恥骨結合の感覚神経支配

今回調査した文献には恥骨結合の感覚神経支配に関する記述はありません。

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参考文献

1)P. D. Andrew, 有馬慶美, 日髙正巳(監訳):筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版. 医歯薬出版, 2020, pp525-526.
2)武田功(統括監訳): ブルンストローム臨床運動学原著第6版. 医歯薬出版, 2013, pp308.
3)久保俊一, 中島康晴, 田中康仁: 関節可動域表示ならびに測定法改訂について(2022 年4 月改訂). Jpn J Rehabil Med. 2021; 58: 1188-1200.
4)博田節夫(編): 関節運動学的アプローチ AKA. 医歯薬出版, 1997.
5)秋田恵一(訳): グレイ解剖学(原著第4版). エルゼビア・ジャパン, 2019, pp369-371.
6)金子丑之助(原著), 金子勝治(監修), 穐田真澄(編著): 日本人体解剖学 上巻 解剖学総論・骨格系・筋系・神経系(改訂20版). 南山堂, 2020, pp178.
7)長島聖司(訳): 分冊 解剖学アトラス I (第5版). 文光堂, 2002, pp188-189.
8)富雅男(訳): 脊柱の評価とモビリゼーション. 医歯薬出版, 1997.
9)荻島秀男(監訳): カパンディ関節の生理学 III 体幹・脊柱. 医歯薬出版, 1995, pp62-63.
10)山嵜勉(編): 整形外科理学療法の理論と技術. メジカルビュー社, 1997.
11)中村隆一, 斎藤宏, 長崎浩:基礎運動学(第6版補訂). 医歯薬出版株式会社, 2013, pp290-291.
12)板場英行: 関節の構造と運動, 標準理学療法学 専門分野 運動療法学 総論. 吉尾雅春(編), 医学書院, 2001, pp20-41.
13)大井淑雄, 博田節夫(編): 運動療法第2版(リハビリテーション医学全書7). 医歯薬出版, 1993, pp165-167.
14)津山直一, 中村耕三(訳): 新・徒手筋力検査法(原著第10版). 協同医書出版社, 2022, pp447-517.
15)河上敬介, 磯貝香(編): 骨格筋の形と触察法(改訂第2版). 大峰閣, 2013.
16)森於菟, 小川鼎三, 大内弘, 森富: 分担解剖学第1巻(第11版). 金原出版, 1983, pp147-148,222-225.
17)野村嶬: 関節と靭帯, 標準理学療法学・作業療法学 専門基礎分野 解剖学(第4版). 野村嶬(編), 医学書院, 2018, pp128.
18)Gray H, Lewis WH: Anatomy of the human body 21st edition. Lea & Febiger, 1924, pp310-311.
19)瓜谷大輔: 骨盤帯の機能解剖学的理解. 理学療法. 2015; 32: 964-972.
20)Vleeming A, Schuenke MD, Masi AT, Carreiro JE, Danneels L, Willard FH. The sacroiliac joint: an overview of its anatomy, function and potential clinical implications. J Anat. 2012; 221: 537-67. doi: 10.1111/j.1469-7580.2012.01564.x.
21)Walheim G, Olerud S, Ribbe T: Mobility of the pubic symphysis Measurements by an electromechanical method. Acta Orthop Scand. 1984; 55: 203-208. doi: 10.3109/17453678408992338.
22)Garras DN, Carothers JT, Olson SA: Single-leg-stance (flamingo) radiographs to assess pelvic instability: how much motion is normal?. J Bone Joint Surg Am. 2008; 90: 2114-2118. doi: 10.2106/JBJS.G.00277.

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2026 年 1 月 2 日

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