歩行における各筋の働き(下腿,足部の筋)

はじめに

歩行における下腿と足部の筋の活動のタイミングや働き(役割)をまとめました(殿部,大腿はこちら)。

別々にまとめている分,歩行の全体像は分かりにくくなっており,歩行周期についての基礎知識がないと読みづらいと思います。
また,通読ではなく,必要な筋のところだけを読むことを想定しています。
ですので,同じように働く筋では,記載内容が重複します。

EMG(筋電図)で測定した筋活動の強度は,% MMT で示されています。
% MMT は,徒手筋力テストで最大収縮を行なっている時に記録される強度を基準とし,その基準の何% の強さであるのかを表します。

ヒラメ筋と腓腹筋の活動強度は % MHR で示されています。
踵を最大限上昇させたときの EMG を基準とします。
この強度は,ダイナモメータを使用した最大限の等尺性収縮テストで記録される値の 60% に相当します。

「GC」は gait cycle(歩行周期)の略です。

文献 1)を主に参考にしてまとめています。
図も文献 1)を参考にして作図しています。

目次

ヒラメ筋

ヒラメ筋のEMG
図 1:ヒラメ筋のEMG

活動期間:7% GC 〜 52% GC
最大活動のタイミングと強度:43% GC,86% MHR

距腿関節底屈筋としての働き

荷重応答期の後半(7% GC) から活動を開始します。
荷重応答期にはヒールロッカーが行われているのですが,6% GC からは距腿関節の背屈は始まっており,アンクルロッカーでの距腿関節背屈につながります。
ヒラメ筋の遠心性収縮で,下腿が前に倒れるのを制御しています。

立脚中期では,アンクルロッカーによる距腿関節背屈を制御しています。
立脚中期の全体にわたって 30% MHR くらいの強度を維持します。

立脚終期に近づくと,活動は急速に増強して,立脚終期の後半(43% GC)に 86% MHR の最大強度に達します。
立脚終期では身体重心が支持基底面よりも前に出ていきますので,距腿関節が背屈し,身体が前方に倒れる力が働きます。
それに抗するためにヒラメ筋が働きます。
そして,距腿関節背屈を制御することで,フォアフットロッカーを維持することができます。
距骨下関節内反筋として,距骨下関節の制御も行います。

続いて.ヒラメ筋の活動強度は急速に減少し,前遊脚期の初め(52% GC)に休止します。
その後も距腿関節は底屈していきますが,それは,引き伸ばされていたアキレス腱の短縮(弾性反跳)によるものです。

距骨下関節内反筋としての働き

荷重応答期の距骨下関節外反に対して,遠心性収縮によって衝撃吸収を行います。
立脚終期には距骨下関節を内反し,それが横足根関節のロックへとつながり,前足部での支持性を高めます。

腓腹筋

腓腹筋のEMG
図 2:腓腹筋のEMG

活動期間:9% GC 〜 50% GC
最大活動のタイミングと強度:40% GC,78% MHR

ヒラメ筋より少し遅れて活動を開始します。
また立脚中期には,ヒラメ筋はある程度一定の強度で働きますが,腓腹筋は徐々に強度が増していきます。
腓腹筋には膝関節屈曲の作用があるからです。
荷重応答期は膝関節伸筋が遠心性収縮で衝撃吸収を行なっていますし,立脚中期は膝関節が伸展する相ですので,膝を屈曲する腓腹筋は強く働くことができません。

荷重応答期と立脚中期での腓腹筋の働きは,ヒラメ筋と同じで,距腿関節背屈の制御です。

立脚終期の中間(40% GC)に78% MHR のピークに達します。
身体重心が前方に向かって落下することで生じる距腿関節背屈方向のモーメントに対して強く働く必要があります。
また,距腿関節背屈を制御することで,フォアフットロッカーを維持しています。

そして,立脚終期と前遊脚期の境界(50% GC)で休止します。

前遊脚期に距腿関節は底屈するのですが,それは,引き伸ばされていたアキレス腱の短縮(弾性反跳)によるものです。

腓腹筋には距骨下関節を外反する作用があるのですが,その点についての記載はありません。

後脛骨筋

後脛骨筋のEMG
図 3:後脛骨筋のEMG

活動期間:0% GC 〜 50% GC
最大活動のタイミングと強度:44% GC,34% MMT

0% GC に活動を開始し,単下肢支持期をとおして働き続けます。

荷重応答期に距骨下関節の外反を制御することで衝撃吸収を行います。
3% GC で活動強度の小さなピーク(22% MMT)があります。

立脚中期にはアンクルロッカーによる距腿関節背屈を制御します。
また,距骨下関節外反を制御し,20% GC からは距骨下関節を内反します。

立脚終期の中頃(44% GC)に 34% MMT の最大活動となります。
これは,距腿関節底屈筋群としての働きです。
距腿関節底屈筋群は,距腿関節を制御し,フォアフットロッカーを保持しています。
距骨下関節の制御も行います。

長趾屈筋

長趾屈筋のEMG
図 4:長趾屈筋のEMG

活動期間:13% GC 〜 54% GC
最大活動のタイミングと強度:47% GC,強度の記載なし

立脚中期で,足趾が接地すると活動を始めます。
距腿関節底屈筋群としてアンクルロッカーによる距腿関節背屈を制御します。
足部内反筋として,横足根関節(内側縦アーチ)を支えます。

踵があがり前足部と足趾で体重を支えることになる立脚終期はより強く働きます。
距腿関節底屈筋群として距腿関節を制御し,フォアフットロッカーを保持しています。
そして,中足趾節関節での動きを制御する働きがあります。
さらに,立脚中期から引き続いて,横足根関節(内側縦アーチ)を支えており,距骨下関節も制御しています。
最大活動は 47% GC に生じます。

前遊脚期の前半で休止します。
前遊脚期での長趾屈筋の働きについては記載がありません。
おそらく,トウロッカーを維持するのに働いているはずです。

長母趾屈筋

長母趾屈筋のEMG
図 5:長母趾屈筋のEMG

活動期間:31% GC 〜 54% GC
最大活動のタイミングと強度:49% GC,強度の記載なし

立脚終期の始めから前遊脚期の前半まで働きます。

立脚終期には,前足部と足趾で体重を支え,フォアフットロッカーを維持するために強く働く必要があります。
距腿関節底屈筋群として働きます。
また,第1中足趾節関節を制御するために働きます。
立脚終期に圧中心が内側に移動することで,長母趾屈筋はより強く働きます。
さらに,距骨下関節内反筋として距骨下関節を制御しています。

前遊脚期での働きについては記載がありませんが,おそらく,トウロッカーを維持するのに働いているはずです。

長腓骨筋

長腓骨筋のEMG
図 6:長腓骨筋のEMG

活動期間:15% GC 〜 51% GC
最大活動のタイミングと強度:41% GC,強度の記載なし

立脚中期から立脚終期にかけて活動します。

立脚中期での働きについては記載がありません。

距骨下関節外反筋です。
内反筋の拮抗筋として働き,距骨下関節を制御します。

最大活動は立脚終期に生じます。
フォアフットロッカーの保持するため,距腿関節底屈筋として働きます。
また,前足部での支持領域を確保するため,第1中足骨を制御しています。

短腓骨筋

短腓骨筋のEMG
図 7:短腓骨筋のEMG

活動期間:20% GC 〜 55% GC
最大活動のタイミングと強度:46% GC,強度の記載なし

立脚中期の後半から前遊脚期の前半にかけて活動します。

立脚中期での働きについては記載がありません。

距骨下関節外反筋です。
内反筋の拮抗筋として働き,距骨下関節を制御します。

最大活動は立脚終期に生じます。
フォアフットロッカーの保持するため,距腿関節底屈筋として働きます。

長腓骨筋と違って前遊脚期に活動しますが,その働きについては書かれていません。

遊脚期に活動する場合があるのですが,その働きについても記載がありません。

前脛骨筋

前脛骨筋のEMG
図 8:前脛骨筋のEMG

活動期間:56% GC 〜 13% GC
最大活動のタイミングと強度:0% GC または 1% GC,37% MMT

最大活動のタイミングについては,文献内で異なる記載があります。

前遊脚期での活動は,遊脚初期での距腿関節背屈の準備です。
距腿関節底屈を減速し,また,遊脚初期での素早い背屈に備えて収縮強度を強めていきます。

遊脚初期に,遊脚期での活動のピークがあります。

遊脚中期は,距腿関節の動きは少なく,中間位を保持しているのに近い状態ですので,活動は弱まります。

遊脚終期には,初期接地に備えて,活動強度が高まっていきます。

初期接地では,踵から接地することで底屈モーメントが生じます。
それに対して,前脛骨筋が働きますが,距腿関節は底屈してしまします。
この前脛骨筋の遠心性収縮によって衝撃を吸収します。
距骨下関節での外反も前脛骨筋が制御し,衝撃を吸収します。
初期接地で最も強く活動することになります。

荷重応答期でも 4% GC までは底屈が続き,初期接地と同様に前脛骨筋による衝撃吸収が行われます。
そして,前脛骨筋が収縮を続けることで,距腿関節は背屈していきます。
それによってヒールロッカーが維持されます。
距骨下関節外反も初期接地に引き続いて生じており,前脛骨筋が働きます。

立脚中期の距腿関節の背屈は外力による受動的なものです。
前脛骨筋は活動しません。

長母趾伸筋

長母趾伸筋のEMG
図 9:長母趾伸筋のEMG

活動期間:58% GC 〜 9% GC
最大活動のタイミングと強度:74% GC,40% MMT

距腿関節背屈筋群として,前脛骨筋と同じように働きます。

前遊脚期の活動は,遊脚期での距腿関節背屈のための準備です。

遊脚初期の距腿関節の急速な背屈のために働き,遊脚初期の終わりに最も活動します。
この時,母趾は前遊脚期の最大背屈位から底屈しています。
長母趾伸筋が働いているのに母趾は底屈することになります。
この点について文献には記載がありませんが,おそらくは,前遊脚期まで働いていた長母趾屈筋の力が残っているからだと思います。

遊脚中期には距腿関節を大きく動かさないため,長母趾伸筋の活動は弱まります。
母趾もやや背屈位で保持するだけですので,それほど強く働く必要はありません。

遊脚終期には,初期接地に備えて,活動強度が高まっていきます。
母趾は背屈していくのですが,この母趾の背屈が必要な動きなのか?あるいは,長母趾伸筋が初期接地に備えて働くから背屈してしまうのか?どちらなのかは分かりません。

初期接地には距腿関節に対して外力による底屈モーメントが生じます。
これに対して,長母趾伸筋が距腿関節底屈を制御し,衝撃を吸収します。

荷重応答期の 4% GC までは距腿関節底屈が続き,長母趾伸筋によって衝撃が吸収されます。
その後は,距腿関節を背屈してヒールロッカーを維持します。

立脚中期での距腿関節背屈は外力による受動的なものですので,荷重応答期の長母趾伸筋の活動は徐々に弱まり,立脚中期に入るまでに休止します。

長母趾伸筋には距骨下関節外反の作用があるのですが,その外反モーメントは小さいため,文献には外反筋としての働きは詳しく書かれていません。

長趾伸筋

長趾伸筋のEMG
図 10:長趾伸筋のEMG

活動期間:57% GC 〜 12% GC
最大活動のタイミングと強度:70% GC,32% MMT

長母趾伸筋と同じように働きます。

前遊脚期の活動は,遊脚期での距腿関節背屈の準備です。
また,距骨下関節外反筋として働き,距骨下関節を制御しています。

遊脚初期における距腿関節の急速な背屈を行うために働き,遊脚初期の終わりに最も活動します。
この時,足趾は前遊脚期の最大背屈位から底屈しています。
長趾伸筋が働いているのに足趾は底屈することになります。
この点について文献には記載がありませんが,おそらくは,前遊脚期まで働いていた長趾屈筋の力が残っているからだと思います。

遊脚中期には距腿関節を大きく動かさないため,長趾伸筋の活動はやや弱まります。
足趾もやや背屈位で保持するだけですので,それほど強く働く必要はありません。

遊脚終期には,初期接地に備えて,活動強度が高まっていきます。
しかし,この変化は前脛骨筋や長母趾伸筋ほどではありません。
足趾は背屈していくのですが,この足趾の背屈が必要な動きなのか?あるいは,長趾伸筋が初期接地に備えて働くから背屈してしまうのか?どちらなのかは分かりません。

初期接地には距腿関節に対して外力による底屈モーメントが生じます。
これに対して,長趾伸筋が距腿関節底屈を制御し,衝撃を吸収します。

荷重応答期の 4% GC までは距腿関節底屈が続き,長趾伸筋によって衝撃が吸収されます。
その後は,距腿関節を背屈してヒールロッカーを維持します。

立脚中期での距腿関節背屈は外力による受動的なものですので,荷重応答期の長趾伸筋の活動は徐々に弱まり,立脚中期に入るまでに休止します。

小趾外転筋

活動期間:20% GC 〜 60% GC
最大活動のタイミングと強度:記載なし

休止のタイミングについて明確な数字の記載がなく,EMG の図より読みとりました。
働きについての明確な記載はありません。
しかし,「足部内在筋群の活動は足部の回内に伴って増大する」とありますので,足部回内を制御しているのかもしれません。

短趾伸筋

活動期間:20% GC 〜 60% GC
最大活動のタイミングと強度:記載なし

休止のタイミングについて明確な数字の記載がなく,EMG の図より読みとりました。
働きについての明確な記載はありません。

短母趾屈筋

活動期間:20% GC 〜 60% GC
最大活動のタイミングと強度:記載なし

休止のタイミングについて明確な数字の記載がなく,EMG の図より読みとりました。
働きについての明確な記載はありません。
しかし,「足部内在筋群の活動は足部の回内に伴って増大する」とありますので,足部回内を制御しているのかもしれません。
また,立脚終期における前足部と足趾による支持領域を確保するために,足趾の動きを制御しているようです。

骨間筋群

活動期間:35% GC 〜 60% GC
最大活動のタイミングと強度:記載なし

休止のタイミングについて明確な数字の記載がなく,EMG の図より読みとりました。
働きについての明確な記載はありません。
しかし,「足部内在筋群の活動は足部の回内に伴って増大する」とありますので,足部回内を制御しているのかもしれません。

文献には「外側の底側骨間筋」の説明もあり,それは 20% GC から活動し,横足根関節を支持するとあります。
骨間筋群との違いは分かりません。

母趾外転筋

活動期間:40% GC 〜 60% GC
最大活動のタイミングと強度:記載なし

休止のタイミングについて明確な数字の記載がなく,EMG の図より読みとりました。
働きについての明確な記載はありません。
しかし,「足部内在筋群の活動は足部の回内に伴って増大する」とありますので,足部回内を制御しているのかもしれません。
他の足部内在筋より活動開始が遅いのは,立脚終期に踵がより上昇し,圧中心が母趾側に移動してくるのと関係しているのかもしれません。

短趾屈筋

活動期間:40% GC 〜 60% GC
最大活動のタイミングと強度:記載なし

休止のタイミングについて明確な数字の記載がなく,EMG の図より読みとりました。
働きについての記載があやふやなのですが,立脚終期における前足部と足趾による支持領域を確保するために,足趾の動きを制御しているようです。

おわりに

歩行時の筋の働きは複雑ですが,理学療法士であれば避けて通れないところです。

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参考文献

1)武田功(統括監訳): ペリー 歩行分析 原著第2版 -正常歩行と異常歩行- .医歯薬出版, 2017.
2)月城慶一, 山本澄子, 他(訳): 観察による歩行分析. 医学書院, 2006.

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