研究法

研究デザイン コホート研究,ケースコントロール研究,無作為化比較試験

投稿日:2017年11月28日 更新日:

第52回理学療法士国家試験午前問題23より
「対象者を現在の生活習慣から喫煙群と非喫煙群とに分け,喫煙に起因する将来の脳血管障害の発生を明らかにする疫学研究法はどれか」

これはコホート研究ですね。
そして,問題文がコホート研究の説明になっています。
でも「喫煙に起因する将来の脳血管障害の発生を明らかにする」が分かりづらいです。
タバコを吸う人達と吸わない人達で脳血管障害を発症するかどうかを観察します。
そして,タバコを吸う人達の方で脳血管障害がより多く発症すれば,タバコを吸うと脳血管障害を発症しやすいということが分かります。

似たような研究にケースコントロール研究(症例対照研究)があります。
問題文にあてはめてみましょう。
「対象者を脳血管障害発症群と非発症群とに分け,過去の喫煙の有無を明らかにする疫学研究」になります。
コホート研究の場合と同じことを調べますが,方法が逆になります。
すでに脳血管障害を発症している人達とまだ発症していない人達を集めて,過去にタバコを吸っていたかどうかを調べます。
タバコを吸っていた人の割合が,脳血管障害を発症していない人達よりも,発症した人達の方でより多いのであれば,タバコを吸うと脳血管障害を発症しやすいということが分かります。

無作為化比較試験もよくでてきます。
RCTとか,ランダム化比較対照試験ともいいます。
これも問題文にあてはめてみましょう。
「対象者をランダムに喫煙群と非喫煙群とに分け,喫煙に起因する将来の脳血管障害の発生を明らかにする疫学研究法」です。
対象となる人達を2つのグループに分け,一方にはタバコを吸うよう指示し,もう一方にはタバコを吸わないよう指示します。
そして,タバコを吸わせた人達の方で脳血管障害がより多く発症すれば,タバコを吸うと脳血管障害を発症しやすいということが分かります。
統計学的に有意差を出すためには,それなりにたくさんの人が脳血管障害を発症するのを見届ける必要があります。
こんな研究,しちゃダメです!

因果関係を証明するのであれば,無作為化比較試験が一番確実ということになっています。
でも,害があるかどうかを証明するための無作為化比較試験は,倫理的には行えません。
これって重要なことだと思います。
「体に悪い」ということは,科学的な根拠が不十分であることが多いのです。
「体に悪い可能性が高そう」なものを禁止しようとする意見に対して,簡単に「根拠がない」と反論できてしまい,論争が続くことになります。

2019年4月17日 加筆修正
2017年11月28日

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